俺は朝比奈陽翔。
 高校2年生だ。
 学校は中の上ぐらいのよくある中堅進学校だ。
 実は人に言えない特殊能力がある訳でもなく、たいした長所もない普通の高校生だった。
 そんな俺にもひとつだけ自慢できることがあった。
 それは物心ついたときからの仲の幼なじみがいることだった。

 しかも二人も。

 あまり自慢できることのない陽翔にとってはかけがえのないものだった。
 幼なじみは二人とも系統別の絶世の美少女だった。
 一人は名を綾瀬浪華(あやせなみか)といいもう一人は中津恵梨香(なかつえりか)という。
 浪華は幼稚園からずっと一緒だが恵梨香は小学校卒業の時に父親の転勤で引っ越してしまった。
 よって今は一人しかいない幼なじみだが、普段から連絡を取り合ってるし二人といっても過言ではないだろう。

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「おはよう!!」

 そんな声が聞こえたと思ったらいきなり体に衝撃が加わった。

「だからって上に乗るのはないでしょ……」

「陽翔!おはよう!!」

「おはよう。起こしに来てくれてありがとう浪華。さすがに上に乗ってまで起こしてくれなくても……」

「ご、ごめん……。重かった?」

「いや全然重くなかったぞ。むしろ軽すぎて心配になるくらいには」

「本当!?よかった~」

 そういう浪華はほっとしたような顔をした。

「でもそう易々とひとの上に乗るな」

「わかったよう……」

「じゃあ朝ごはんにしよう!」

「うん!」

 もう日常となっているこの会話をした後に朝食を食べ、家を出る。
 学校では普通にすごし、昼は浪華とご飯を食べ夜は浪華と帰る。
 はたから見ると恋人のようだが実際ただの幼なじみだ。
 家が隣同士で二人とも部活に入っていないため必然的に一緒に帰るのだ。
 この事からクラス、というか学校単位で『おしどり夫婦』とまでいわれている。
 そんないつも通りの日常はある日ガラリと変わった。
 とはいってもいい方向にだが。
「今日から新学期だね~」

「そうだな」

「そういえばクラス替えもあったよね!どんな人が同じクラスなのかな~?もしかしたら陽翔と離れ離れかも……」

「そういって今までクラスが一緒じゃないことがあったか?」

「そ、そうだよね!たぶん大丈夫だよね!」

「ああ」

「あ!発表されてるよ!見に行こう!」

「わかった。わかったから引っ張る。」

 浪華が一人ではしゃいでいるのを横目に俺も見てみるとやはり同じであった。
 ここまで同じだと何かの意図を感じてしまう。
「やっぱり一緒だったね!」

「ああ。今年もよろしくな!」

「こちらこそ♪」

 クラスに向かい指定された席に着くと後ろには中学からの親友が座っていた。
「おっす陽翔」

「おはよう。秀哉(しゅうや)

「おっはー」

「おはよう綾瀬さん」

 ちなみに誕生日順に出席番号を振られているため浪華の席はかなり遠い。
 その点秀哉は一日違いなので同じクラスだと必ず後ろにいる。
 周りには再会を喜んでいる人や人選に落ち込んでいる人や頑張ってなれようとしているひと、緊張しているひとなど様々いた。
 ただ少しクラスの雰囲気が全体的に浮いているのは気のせいだろうか?
「そういえば陽翔は知ってるか?」

「なんのことだ?」

「うちのクラスに転校生が来るらしい。しかも絶世の美少女といっても過言ではない女子だ」

「まじか。どんなひとだろうな?」

「楽しみだ」

「とは言いつつお前は彼女いるじゃねーか」

「ばっかお前それとは違うんだよ!」

「そういうもんかな?」
 などなど雑談をしていると先生が入ってきた。