前回のあらすじ
運よく馬車に乗せてもらい、宿場へとたどり着いた閠とリリオ。
一向に話は進まないがそもそもそういうお話ではないのでそのあたりは期待しないように。



 宿場というのは、まあそんなに大した規模のものでもなかった。

 私たちの通ってきた細い道が太い街道と合流し、そこから少し進んだ先にその宿場はあったのだけれど、ようは街道沿いに何軒か、木と石でできた建物が並んでいるといった程度のものだった。それでもまあ、暗くなってきたころに人家の明かりが見えるというのは何となくほっとするものではある。

 建物の種類は本当に少なく、いくらか立派に見えるのが問屋(とんや)という宿場の管理施設で、いくらかぼろいが大きさはあるのが木賃宿(きちんやど)。それより少し立派なのが旅籠(はたご)。いまはもう閉まっているけれど、簡単な商店と茶屋が一軒ずつ。

 それからこれは目を引いたのだが、厩舎には驚かされた。

 日本でいう江戸時代の宿場では疲れた馬を交換したりできるようになっていたそうだが、この世界の宿場でもそのようなシステムを取っているようで、下手をすると人間の使う木賃宿よりよほど立派な厩舎があった。
 あったのだが、どうも私の想像した厩舎とは違った。いや、想像してしかるべきだったとは思うのだが。

「………馬?」
「馬ですねえ」

 一応リリオに尋ねてみたけれど、この世界ではこれが常識らしい。

 甲馬(テストゥドセヴァーロ)とかいうのはこの辺りでは珍しいらしく替え馬はいなかったが、それ以外に珍妙な動物がゴロゴロといた。万国ビックリ動物ショーといった感じだ。
 でかい鳥やら蜥蜴やら虫やら、どれもこれも馬扱いらしい。端っこの方でどうやらまともな馬を見つけてほっとしてしまったくらいだ。これも馬に似ているだけで私の知っている馬ではないのかもしれないが、それを言ったらリリオだって見た目は人間だけれど根本的に霊長類とは構造が違うのかもしれない。

 馬車に載せてくれた老人は厩舎に馬を預けて、今晩は旅籠に泊まるという。明日の朝に出発するので、都合が良ければ乗っていくかねと言ってくれた。リリオが伺うように見上げてくるので好きにしろと頷くと、喜んでと翌日の護衛任務を受けていた。
 尻が痛くなるとは言え歩くよりは早い足が手に入るのはいいことだし、お喋りの好きなリリオとしては物知りな旅商人との会話は楽しいのだろう。

 旅籠に向かう老人と別れて、リリオはまっすぐに木賃宿へ向かった。

 旅籠と木賃宿と何が違うかと言えば、ありていに言ってグレードが違うらしい。

 まず旅籠の方が上等で、食事も出る。個室には鍵もかかるし、安全面でも上だ。一方で木賃宿は金のない旅人向けの宿で、食事は出ないが竈などは貸してもらえて自炊はできる。鍵のかかる部屋などはなく、場合によっては雑魚寝も普通だという。

 リリオはどうにも金持ちのようには見えなかったし、私もこの世界の金の持ち合わせはない。女二人旅でちょっと無防備すぎるのではないかとも思うが、リリオはあれで大荷物を背負って歩きまわってもけろりとしているくらい頑健だし、私も大概の相手に後れを取るような体ではないらしい。旅籠の食事も気にはなるが、ここは旅の主体であるリリオに合わせよう。

 勝手を借りてリリオがビスケットを砕いて干し肉と煮た簡単な粥のようなものを拵えてくれ、二人でもそもそと食べ終えるまではまあこんなものかと思っていた。森の中より食事のグレードが下がった気はするが、獲物が獲れた森の中と携行食しかないここでは食事の質も変わって当然だろう。もともとブロックタイプの栄養食品で食事を済ませていた私だ。温かいだけマシとも感じる。

 問題は、客が少ないから空いていると通された二人部屋であった。

 運が良かったですねと喜んでいるリリオに対して私はカルチャーショックに打ちのめされていた。

 そりゃあ、ホテルのスイートルームを想像するほど馬鹿ではない。ビジネスホテルの狭い一室でもまだ豪華だろうなとは思う。しかしこれはあんまりだった。

 鍵もかからないどころかしっかり閉まりもしないずさんな扉に、隙間風が堂々通り抜ける寸法のあっていない突き上げ窓。寝台は脚の着いたただの板切れに、使い古されてほとんど死にかけた()えた匂いのする寝藁。土足で出入りする文化圏だからなのか土埃にまみれた床。鼠か何かの糞。蜘蛛の巣。

 あ、だめだ、思考が考えるのを拒み始めた。

 これは安い木賃宿としては割と平均的な代物らしく、リリオは気にした様子もなく荷物を下ろし、寝台に腰を下ろし、じゃあ今日はもうやることもないですし寝ましょうかという。
 じゃあそうしようかというのは無理だった。私には無理だった。いくらメンタルがアンデッドに片足を踏み込んでいる私とはいえ、曲がりなりにも現代社会のやや陰りの見える先進国家で清潔な生活を送ってきた身としては、これは耐えられなかった。

「お湯」
「はい?」
「お湯借りてきて」
「え?」
「追加料金でお湯借りれるんでしょ。借りてきて」

 愛想の悪い木賃宿の主は、そのように説明していたはずだった。

「えーと、でもその、路銀にあまり余裕がですね」
「払う」
「え」

 私は腰のポーチに手を突っ込んでインベントリを開き、無造作にゲーム内通貨であったコインを何枚か取り出してリリオに握らせた。

「私の我儘だから、私が払う」
「いや、でも、こんな」
「この国の通貨じゃないから使えるかわからないけど、鋳つぶせば金としては売れるでしょ」
「き、金!?」
「それに」

 うろたえるリリオを無視して、私は喫緊の大問題を前にして、リリオの頭に顔を寄せた。それから肩口。胸元。やはりだ。

「くさい」
「え」
「一緒に旅する以上、君が臭いのは受け入れられない」
「は、はいっ!」

 自分でもぞっとするほど冷たい声で宣言すれば、リリオは大慌てで部屋を出ていった。

 私は鼻に残った匂いを吐き出すように大きく深呼吸する。
 酸化した皮脂の匂い。疲労がたまっているせいかアンモニア臭もする。汗臭さにこもったような腐敗臭。いろいろ混ざり合って悪臭の域だ。いままでは風の通る野外だったし、言うほど余裕があったわけでもないから気にはしなかったが、同じ部屋で距離も近くなればさすがに気になる。部屋自体の饐えた匂いも気に入らない。

 旅人としては仕方がないことなのだろうと頭では理解する。しかし生理的嫌悪はどうしようもないし、衛生的でないということはそれだけ病気などの危険も増える。

 私はマントを脱いで手甲や邪魔な装備を外してインベントリに突っ込み、ブラウスにパンツだけの身軽な服装になって袖をまくり上げ、代わりに使えそうな道具を見繕って引っ張り出す。適当な紐で髪を括り、さあ準備はできた。リリオが湯を沸かして戻ってくるまでそれなりにかかるだろう。となれば、じっとしていても腹立たしいだけだ。

「せめて、寝られるくらいの環境にはしないとな」

 掃除を、開始しよう。


 リリオがお湯の入ったたらいを抱えて戻ってきた時には、部屋はそれなりに見れる状況にはなっていた。本来一定距離に散らばったアイテムをいちいち拾い集めないでも一度に回収する効果のある《無精者の箒》で埃を払い、寝台のゴミ同然の寝藁とまとめて《麻袋》に放り込む。液体系のアイテムを回収するための容器である《ブリキバケツ》に《蒸留水》を惜しげなくぶち込み、売る予定で持っていた《布の服+28》を雑巾代わりにして磨き上げ、仕上げに《魔除けのポプリ》を何か所かに放り投げて匂いも対策。

 まあ及第点かなというあたりで帰ってきたリリオは、扉を押し開けるなり呆然と部屋の変わりようを見ていたが、綺麗になる分には構わないだろう。文句は言わせない。

 おずおずと入ってきてたらいを置くリリオ。お湯は、まあ、うん、少し熱いくらい。ちょうどいいだろう。

 何か言おうとするリリオを無視して、ドアをしっかりと閉めて、ナイフでくさびを打って開かないようにする。客も少ないし気にするほどではないだろうが、のぞかれてはかわいそうだ。

「あ、あの?」
「脱いで」
「あのー!?」

 面倒くさいので無理やり脱がそうかとも思ったが、革鎧の外し方なんて知らないし、この世界の服のつくりもよく知らない。

「綺麗にするから、早く、脱いで」
「いや別にそんなに言うほど」
「くさい」
「ぐへぇ」
「私は旅の連れが臭くて汚いなんて耐えられない。最低限衛生的でいてほしい」
「ふ、普通だと思うんですけど」
「君が()()であるならば、君が()()であるうちは、君の寂しさを埋めてやるのも、やぶさかではない」
「いいセリフをこんなところでっ!?」

 ええい面倒くさい。自分で脱ぐか無理やり剥かれるか選べと迫れば、少し迷った末に自発的に脱いでくれた。助かる。脱がせ方がわからないので破るほかになかった。まあこれでこの世界の鎧と服の脱ぎ方はわかったから次回からは無理やりでもいいだろう。

 キャミソールとズロースのような下着姿になったリリオは、小柄さも相まって完全にお子様だった。この格好で庭とか駆けまわっててもおかしくないレベルのお子様だった。どこがとは言わないがかわいそうなくらいお子様だった。今後の成長を祈ってやろう。

 ともあれ、恥じらうように目を伏せるリリオの乙女心を完全に無視してそのキャミソールとズロースもまとめてひん剥き、たらいに放り込む。《暗殺者(アサシン)》系統の素早さ(アジリティ)をなめるなよ。

「はわわー!?」

 ここまで愛らしさのない必死な「はわわ」は初めて聞いた。
 混乱して、ない胸を隠すリリオを無視して、まず髪留めをほどいて外すと、いやあ、これがまたひどい。ポニーテールにした跡がくっきりと髪に残っているのみならず、皮脂と埃によって髪がガッチガチに固まっていてぼさぼさだ。ほどいたせいでもわっと臭ってくる。手櫛で梳いてやったら形容しがたい何かが指に纏わりつきそうだ。

 シャンプーやらリンスやらがこの世界にあるとは思えないが、石鹸くらいはないだろうか。メソポタミア文明の頃にはすでに発見されてたし、古代ローマでは塩析も行われたたし、中世以前から生産は割と大規模に行われていたはずだ。この世界の文化程度はいまだによくわからないが、宿場などの制度などからしてもそれなりに安定して発達しているようだし、ファンタジー世界だから何もかも程度が低いなどという考え方は阿呆だろう。

 試しに石鹸は持っていないのかと聞いてみたところ、あるという。荷物をあさってみれば、木箱に納められた固形石鹸があった。一応きちんとした石鹸のようだ。
 あまり使用形跡がないので聞いてみたところ、極端に高いわけではないものの、路銀を節約したい中ではそうそう気楽にも使えなかったらしく、石鹸に金をかけるなら装備や食事に金をかけたかったという。それにまた、余り身ぎれいにしていると女の一人旅では目を付けられるかもしれないことを恐れた、とこれは納得できる理由もあった。

 しかしそれはそれ、これはこれだ。石鹸代ぐらいなら出してやる。女二人旅でしかもレベル上限にある私が一緒なら目をつけられたところで痛くもかゆくもない。

 私は問答無用で盛大に石鹸を泡立て、頭の先から足の先まで徹底的に磨き上げることにした。

 最初の内はあまりにも汚れがひどくて石鹸がなかなか泡立たず、湯が真っ黒に染まるほどだったが、二度ほど湯を貰い直して、何とかまともに泡立つようになった。その間にリリオも洗われるのに慣れてきたようで、目をつぶって心地よさそうに身を任せてくるようになった。たらいにぺったりと腰を下ろして大人しくしてくれるのは洗う側としては恥ずかしがって暴れられるよりありがたい。ありがたくはあるが、胸やら足の間やらまで洗われても気にしないのはどうなんだ君。この世界では成人とはいえやはり子供は子供なんだろうなあ。大型犬でも洗っているような気持ちで無心で黙々と洗ううちに、泡も真っ白、湯のにごりもほとんどなくなった。湯をかけてやれば見違えるほどきれいになった、と思う。

 しかしさて、ここまでやってはいおしまいでは片手落ちな気もする。

 この石鹸、確かに十分な洗浄力はあるのだけれど、もろにアルカリ性なのだ。皮膚が溶ける、というほど強いものではないが、髪が痛むのは間違いない。となれば酸性に傾けてやらなければならない。確かリンスももともとはクエン酸水溶液あたりだったか。

 私はインベントリを開いて《目覚まし檸檬(れもん)》を取り出してお湯にいくらか絞り出す。これは状態異常の一種である睡眠状態を治す回復アイテムなのだが、檸檬というからには柑橘系、酸性だろう。これをお湯に溶いて、丁寧に髪に馴染ませるようにくしけずってやる。

 一応効果はあったようで、ややきしきしとしていた髪質もしっとりと落ち着いたし、檸檬のさっぱりとした香りもきつすぎず、程よい香りづけになっている。たらいから出たリリオを《セコンド・タオル》で拭いてやり、替えの下着を身に着けている間に髪の水気を取ってやる。

 そうして改めて見下ろしてみれば、我ながら良い仕事だ、と胸を張れる仕上がりだった。元々白い肌は磨き上げたおかげかつやつやと輝いて見えるしこれはもう若さってすごいなと本気でへこみそうになるレベルだ。このつやつや皮脂のおかげなんだよな。若いうちはうっとうしく思える皮脂も、年取ってくると外部から補填してやらなきゃすーぐカサカサになるんだよ。いいよな。若さ。

 いまこうして水気を取ってやっている髪も、荒れていた時は単に白い髪としか思わなかったけれど、しっかりケアしてやると、象牙のような少しクリーム色がかった柔らかな白で、また透明感があるので平坦ではなく奥行がある。適当に束ねてタオルで丸めてやって、さあ仕上がりだ。

 いやー、いい仕事をした。そう満足感に浸っていると、がっしりと肩を掴まれた。

「うん?」
「綺麗になりました?」
「ああ、なったよ」
「じゃあ次はウルウの番です」
「………フムン?」
「ウルウだって森の中歩いてきたんだから汚れてるはずです!」

 いや、そうかなあ。

 何しろこの体はゲームキャラクターのものだ。走っても汗一つかかないような。そりゃ多少埃とかはついたかもしれないけど、そもそも新陳代謝するんだろうかこの体。食事もできて排泄もしたということはある程度人体に即した働きを、あ、だめだ、考えちゃダメな奴だこれ。

 しかし時すでに遅く、私の認識は私の体に作用し始めたようだった。やり切ったという満足感は、体を動かして上がった体温にこたえるように額に汗をかき始めていた。当然服の内側はもっとだろう。
 面倒な、と思っていると、リリオが肩を掴んだまま胸元に顔を突っ込んでくる。驚いている間に鼻先を服の合わせ目に突っ込んでくる。

「すー………」
「……おい?」
「くふー……」
「……おいってば?」
「ウルウの匂いがします!」

 盛大に平手を張った私は悪くないと思う。





用語解説

・宿場
 街道沿いに設置された駅逓事務を取り扱うための町場。
 馬の引継ぎをはじめ、郵便の取り扱い、宿泊施設、また簡単な商いなどを行う。

・《無精者の箒》
 ゲームアイテム。《エンズビル・オンライン》では敵を倒すと確率でアイテムをドロップするが、いちいちそれを拾い集めなければならなかった。このアイテムは使用することで一定範囲のアイテムを自動で回収してくれる便利なもので、同様のアイテムが多く存在した。
『いくらいい道具をやったところで、倉庫の肥やしになるばかり。部屋を綺麗にしたけりゃあ、まずは部屋の主を追い出すべきだな』

・《麻袋》
 ただの麻袋ではあるが一応ゲームアイテム。アイテムには同じ種類のものならばまとめることができる「スタック」という機能があるが、一部のアイテムにはこのスタック機能がなく、インベントリ内がごちゃつくという問題があった。この《麻袋》は内部に一定量のアイテムをまとめて放り込むことができ、インベントリ内の整理に役立った。とはいえ、どの麻袋に何を入れたか忘れるという更なる悲劇の引き金にもなったが。
『麻袋ほど簡素で、そして使い道の多い道具もそうはあるまい。取り敢えずはそいつの頭にかぶせて、馬に牽かせて市中を引きずり回せ』

・《ブリキバケツ》
 ゲームアイテム。アイテムには専用の容器がなければ回収できない液体系のアイテムが存在する。例えばジュースや薬品などは瓶がなければ持ち運びできない。この《ブリキバケツ》はその液体系アイテム大量に持ち運べてかつ安価ということでしばしば素材採集に使われた。
『寄ってらっしゃい見てらっしゃい。舶来仕込みのこのバケツ、丈夫なことはこの上ない! 何しろ溶岩だって汲めちまう! 持ってるあんたが耐えられればね!』

・《蒸留水》
 製薬や、一部アイテムと組み合わせて使用したりする清潔な水。これ自体には回復効果などは全くない。
『おお、このように透き通った美しい水が他にあろうか! まあ尤、水清いせいで魚が死んだのは予想外だったが』

・《布の服+28》
 装備品は鍛冶屋や特殊なアイテムで強化することで攻撃力や防御力を上げることができる。とはいえ元の性能が低ければいくら強化しても大したことはない。この《布の服+28》はまさしくそんな大したことがない存在の筆頭だろう。初期装備である《布の服》をなぜこんなレベルにまで強化したのかは不明である。
『なに、もっと安くしろだって? 馬鹿言うねえ、世の中布の服とヒノキの棒でドラゴンをぶちのめす猛者だっているんだぜ』

・《魔除けのポプリ》
 ゲームアイテム。使用することで一定時間低レベルのモンスターが寄ってこないようにする効果がある。
『魔女の作るポプリは評判がいい。何しろ文句が出たためしがない。効果がなかった時には、魔物に食われて帰ってこないからな』

・《目覚まし檸檬》
 ゲームアイテム。状態異常の一つである睡眠状態を解除できる回復アイテム。寝ている状態でどうやって食べるのか、寝ている相手にどうやって食べさせるのか、そのあたりは不明だが、深い眠りでも瞬時に目覚めるあたり相当酸っぱいらしい。
『最近眠くて仕方がないって? それじゃあこの檸檬を試してごらん。どんな眠気も一発で………ありゃま、気絶には効かねえんだよなあ』

・《セコンド・タオル》
 ゲームアイテム。戦闘中に敵モンスターに使用すると、攻撃を中止し、ヘイトを解除してくれる。ただしその状態でさらに攻撃を仕掛けると猛烈に反撃してくる上に二度と効果がなくなる。
『猛然と振るわれる拳を必死で耐えるボクサーに、セコンドは迷った。タオルを投げるべきか、否か。何しろ審判が最初に殴り殺されてから、止めるものがいないのだ』