そっと、もう一度正樹は頭を上げて由梨恵を見た。

 優しげにも見える自分を見つめる眼差し。
 蠱惑的に弧を描く唇。
 その表情、その雰囲気に――。

 今まで感じたことがないほどの魅力を覚えてしまっている自分がいた。

 気付いてしまったこの感情を持ったまま、これからの人生をどう歩んでいくべきなのか……。
 それを思うと、また溜息と共に言葉が漏れた。


「嘘だろう……」


END