「あなたが浮気して、この半年間で証拠を取り揃えられた私に慰謝料をたっぷり取られたのは」

 突きつけられた現実に、めまいがして来て正樹はまたテーブルに突っ伏した。
 でも、言わずにいられない言葉は口にする。

「余命半年って言ってたじゃないか」
「そうね。わたしの妻としての余命は半年がせいぜいだとあなたの浮気相手に電話で言われたわ」

 その電話がなければわたしも気付かなかったかもしれないのに、残念ね。と付け加えられた。

「……この半年間、出来る限りお前の側につていてやったのに」
「出来る限りね……。でも、浮気相手とのデートを断れない仕事だとか言って結構出かけていたじゃない」

 バレバレなのよ。と付け加えられた。

「クソッ! ひと月くらい前からはおかしいと思っていたのに!」
「その頃は浮気相手の出産だったものね」

 忙しくても仕方がないわ。と付け加えられた。

 全く、本当にどうなっているんだ。
 いや、分かっている。理解はしている。
 だが信じたくないだけだ。

「……嘘だろう……」

 思わずまた呟く。

 離婚は成立した。
 これで浮気相手とも正式に結婚出来る。
 だが、多額の慰謝料を思うとこの先不安でしかない。

 でも何より。
 一番信じられないのは……。