おかしいと思い始めたのは、残りひと月となった頃だったか。
由梨恵は具合が悪そうなときが何度かあったが、入院するようなほどではなかった。
突然倒れて亡くなるという事も覚悟していたが、そのようなことはなくて安堵していたのだが……。
それでも寿命が近付いているにしては病人らしさがあまり見られなかった。
不思議には思ったが、その頃の正樹は忙しく疲れていて妻に追及することもしなかった。
あの時少しでもちゃんと話をしておけば良かったのではないかと、今更後悔をする。
だが、すでに終わってしまったこと。
何もかもが遅い。
自宅のダイニングテーブルに正樹は頭を抱えるようにして座っていた。
ゆっくり顔を上げると、向かいには由梨恵が微笑んで座っている。
弓月型に弧を描く口元は蠱惑的で、半年前に余命を告げたときと似ているように思えた。
そんな彼女に、正樹は「嘘だろう……」と独り言とも取れる言葉を口にする。
だが由梨恵は優しげにも見える微笑みで現実を口にした。
「嘘じゃないわ。全部、本当の事よ」
そうして、今度は晴れ晴れしいという言葉がピッタリなほどの笑顔を見せる。
由梨恵は具合が悪そうなときが何度かあったが、入院するようなほどではなかった。
突然倒れて亡くなるという事も覚悟していたが、そのようなことはなくて安堵していたのだが……。
それでも寿命が近付いているにしては病人らしさがあまり見られなかった。
不思議には思ったが、その頃の正樹は忙しく疲れていて妻に追及することもしなかった。
あの時少しでもちゃんと話をしておけば良かったのではないかと、今更後悔をする。
だが、すでに終わってしまったこと。
何もかもが遅い。
自宅のダイニングテーブルに正樹は頭を抱えるようにして座っていた。
ゆっくり顔を上げると、向かいには由梨恵が微笑んで座っている。
弓月型に弧を描く口元は蠱惑的で、半年前に余命を告げたときと似ているように思えた。
そんな彼女に、正樹は「嘘だろう……」と独り言とも取れる言葉を口にする。
だが由梨恵は優しげにも見える微笑みで現実を口にした。
「嘘じゃないわ。全部、本当の事よ」
そうして、今度は晴れ晴れしいという言葉がピッタリなほどの笑顔を見せる。