「へぇ」

 今回紐が切れたといっても、使われている紐はまだ綺麗で簡単には切れないようなものだった。
 それが前触れもなく突然切れたり、破けたりするらしい。それは決まって必ず、急死に一生を経た時にだ。
 疑い深い沖田にしてみたら、やっぱりどれも出来すぎた話だった。

「しかし高価なものではないですか?生地も安いものではないようですが。三国の給金で足りますか?」
「そんなに高価ではないのですよ」

 その値を聞くと沖田は驚いた。なんと一回だけ外で酒を飲むのを我慢したら手に入る値段だったのだ。だとしたら、さらにこの商売に儲けはないだろう。ますます神守屋も瑠璃いう女も、よく分からなくなってくる。

 まぁ、儲けようが儲けまいが、御守りが必要ではない自分には関係ないのだが。

 年齢の割には落ち着いて謙虚な姿勢を崩さない沖田だったが、自身の剣の腕に関しては自負していた。結局は何でも、強い方が勝つのだから。

「神頼みも案外、馬鹿にできないですよ」
「まぁでも、面白そうだなとは思いますよ」
「沖田組長も興味が出てきました?」
「・・・そうですね」

 三国は「本当ですか?!」と、なぜか彼が自慢げに笑う。その隣で沖田は薄く笑みを浮かべると、先ほどまで彼女が居た場所を見つめた。

 確かに興味が湧くほどの、面白さはある。沖田はまるで新しい娯楽を見つけたかのような気分だった。

 まぁ興味が湧いたといっても、御守り───というよりも、瑠璃という1人の女についてだが。