「2度も?」
「はい。1度目は例の辻斬り事件、2度目は先日の──」

 三国の顔はあまりにも真剣だった。

 もう何度も死を覚悟したのに、不思議なことに偶然敵が急に腹を下して倒れてしまったり、斬られたかと思ったら真っ二つになったのは御守りだったり。
 証拠にはほど遠い証拠をこれでもかと掲げながら、本当にご利益があるんですよ!と、紐が切れた御守りを見せた。

 そう言われてさすがに沖田も「確かに」にと、元々三国はお世辞にも剣の腕はそこそこだったことを思い出す。まぁ、運が良い奴だとは以前から思っていたが。

 あの壮絶な戦場をくぐり抜けて、今こうして生きているのも奇跡といっても過言ではないかもしれない。

 そう思うと、三国が言っていることの信憑性も高まってくる。

「良かったら沖田組長もどうですか?」
「僕も?」
「はい!持っていたら必ず良いことがありますよ!」

 薦めてきた三国に、彼は顔を渋くする。

 どんなご利益があるのか気になりはするのだが、いらないと言ってしまえばいらないものだった。
 潔く首を縦に降らない男に「沖田さんは御守りなんてなくてもお強いですから大丈夫ですよ」と瑠璃は笑った。どうやら彼女も、商売人の癖には押し売りする気はないらしい。

「新しいものも持ってきますので、少々お待ちください」
「はい!よろしくお願いします」

 奥へ再び消えてしまった瑠璃を見送る。

 切れた紐を直すだけではいけないのかと沖田が尋ねると、三国はこう答えた。身代わり守りなので、一度こうして壊れてしまうと、その効力は無くなってしまうのですよ、と。