「それで三国さん、今日はどのようなご用事で?」
「新しい御守りをお願いしたいのですが」
「承知しました」
「・・・また、命拾いをして頂きました」

 2人のやりとりを眺めていた途中。その言葉に引っかかった沖田は「命拾い?」と首を傾げる。「本当に瑠璃様には感謝しかありません」と、そう言って頭を下げる三国を見て、さらに疑問を抱いた彼は尋ねた。

「その御守りは、それほどまでに御利益があるのですか?」

 ただの手のひらに乗るほどの小さな巾着だ。ひどく言えば布切れ。御守りなどただ気休めだろうに。
 願掛けや祈りなど、そういった類に馴染みがなかった沖田には分からなかった。三国はなぜこれほどまでにこれに心酔しているのかと、沖田には考えられなかったのだ。

「ふふ。三国さんの日頃の行いが良かったからですよ」

 そう瑠璃が返した言葉を聞いた彼は、そうだよなと頷く。

 御守りにそんな力が宿っているはずがない。これを持っているだけで死なないのであれば、この世にいる誰しもが喉から手が出るほど欲しい代物だろう。
 それに、その様なものがこの世に存在したら、日々こうして命を賭けて戦う意味を問うてしまう。運命に逆らう力が、このちっぽけな袋に宿っているはずがない。

 考えれば考えるほど、馬鹿馬鹿しくなってきた。

「しかしこの御守りのおかげで現に私は2度も命を救われておりますので」

 しかし、それを遮るようにして入ってきたのは三国。珍しく食い下がってくる彼を少々面倒くさいと思いながらも、沖田は話を掘り下げることにした。