不意を突かれたように間抜けな顔をしていた沖田がはっとして口を開こうとする前に、先に声を発したのは三国の方だった。
「この方は私が日頃お世話になっている方です」
「あら、それでは新選組の方ですか」
さらに驚くことに彼女は自分達の仕事についても知っているようだった。恐ることもなく、媚びることもなく、顔色ひとつ変えずにに「お勤めご苦労様です」と決まり文句のような言葉を紡ぐ。
妙に落ち着きがある人物である。それに飄々としているところを見ると、どこか自分に重なるものがあった。
「沖田総司と申します」
「あの沖田さん?有名なお方じゃないですか」
「いえいえ、そんな大層なものじゃありませんよ」
「剣の腕が立つ凄いお方だと噂で耳にしましたよ」と持ち上げてきた女は、己の名を瑠璃と名乗った。
この時代にしては少し珍しい名だと思った沖田だったが、それ以上に彼女自身が不思議な存在だった。
髪も結っておらず、化粧っ気もない女性。しかしその顔立ちは中性的で、一切無駄を感じない整った顔。男装して美青年だと言われたら、疑うことなく納得してしまうだろう。
可愛いや綺麗よりも、美しいという言葉が似合う。柄にもなく、こんなに美しい人が世に存在しているのだと感じた。
そして容姿とは他に、不思議だと思う点がもうひとつ。
沖田の目に止まったのは彼女の服装。強風でも吹いたらすぐに倒壊しそうな造りの家屋に似合わず、瑠璃が身に纏っている着物はかなり上質なものだった。
つまり、彼女はこの建物に浮いていた。
「この方は私が日頃お世話になっている方です」
「あら、それでは新選組の方ですか」
さらに驚くことに彼女は自分達の仕事についても知っているようだった。恐ることもなく、媚びることもなく、顔色ひとつ変えずにに「お勤めご苦労様です」と決まり文句のような言葉を紡ぐ。
妙に落ち着きがある人物である。それに飄々としているところを見ると、どこか自分に重なるものがあった。
「沖田総司と申します」
「あの沖田さん?有名なお方じゃないですか」
「いえいえ、そんな大層なものじゃありませんよ」
「剣の腕が立つ凄いお方だと噂で耳にしましたよ」と持ち上げてきた女は、己の名を瑠璃と名乗った。
この時代にしては少し珍しい名だと思った沖田だったが、それ以上に彼女自身が不思議な存在だった。
髪も結っておらず、化粧っ気もない女性。しかしその顔立ちは中性的で、一切無駄を感じない整った顔。男装して美青年だと言われたら、疑うことなく納得してしまうだろう。
可愛いや綺麗よりも、美しいという言葉が似合う。柄にもなく、こんなに美しい人が世に存在しているのだと感じた。
そして容姿とは他に、不思議だと思う点がもうひとつ。
沖田の目に止まったのは彼女の服装。強風でも吹いたらすぐに倒壊しそうな造りの家屋に似合わず、瑠璃が身に纏っている着物はかなり上質なものだった。
つまり、彼女はこの建物に浮いていた。