その反応を見て面白がっている沖田という男は、色白で男にしては華奢な体つきだが、若くして新選組の一番組組長の肩書を持つ有名な人物だった。

 三国と同様今日は非番だった沖田。行きつけの茶屋へ行った帰りに、神守屋に顔を出す部下をたまたま見掛け、声をかけずにはいられなかったのだ。

「それで、ここはどの様な店なのですか?」

 沖田も「神守屋」と掲げられている看板があることは知っていた。しかし、客がいるところはもちろん、人が寄り付いているところを見たことがなかったのだ。

 この様な得体の知れない廃屋はまさに攘夷浪士たちの隠れ蓑とするには絶好の場所で、前を通り過ぎるたびに目を光らせていた時もあった。

 まさかその店に同志が通っているとは想定外だったのである。

「御守りを売ってくれる店ですよ」
「御守りって、あの御守りですか?」

 三国は「その御守りです」と頷く。

 御守りといえば神社で売っているものだと思っていた沖田は「へぇ」と感嘆の声を上げる。
 
 しかし、ぐるりと店内を見回しても商売をしている様な内観ではなかった。ごく普通の長屋である。あえて違和感を述べるならば、人の住んでいる気配すらない閑散とした場所だった。

 三国によると店主は女性らしい。まさか怪しいものでも売りつけられているのではないかと、部下が少し心配になった時。足音が聞こえた。
 
た。

「いらっしゃいませ、今日は・・あら、三国さんじゃないですか」

 店主が奥から姿を現した途端、沖田の目が丸くなる。

 女性だとは聞いたが、そう自分と歳も変わらないような若い女だったのだ。驚いたままそのまま固まっていると、その女は「と、そちらの方は初めて見るお顔ですね」とこちらに向かって笑みを浮かべる。