その日の夜、また新たに男の死体が発見された。


 先日亡くなった男と同様に、死体は異常に冷え切っていた。触ると霜焼けをしてしまいそうなくらいに。

 最初に発見したのは、ちょうど市中の見回りをしていた沖田総司だった。彼が発見した時には、既に男は虫の息。声を掛けると、男は生を吸い取られるかの様に静かに死んでいった。

「組長」
「何か不審な人物はいましたか?」

 平隊士は困った様に首を横に振る。

「いえ、全く」

 すぐに数名の隊士を飛ばしたが、犯人らしき人物は今もなお見つかっていない。

 この男が全身ぐっしょりと濡れているのなら、川にでも飛び込んだのだろうと察しがつく。けれど、もちろんそれらしき所見は見つかっていない。またもや不気味な死を目の当たりにした市中の人々は「呪いだ」「恐ろしい」と言って、それぞれ長屋に入ったっきり出てこなくなってしまった。

 残された沖田は「不気味ですね」と亡くなった男のもとで片膝をつく。

 出来ることならばすぐにでも犯行に及んだ人物を見つけ出し、手柄を上げたいところだ。が、そうも簡単にはいかない様である。隊務には真面目だが、少々気分屋な面がある沖田はため息をこぼす。面倒な案件に巻き込まれたと、億劫な気分だった。

 実行犯は相当の手慣れだろうか。しかし男が自死した可能性も残っているのが、この事件の面倒なところである。どうしたもんかと立ち上がった沖田。すると、駆け寄ってきた隊士が「あの、」ともごもごと口を開く。

「どうやら見廻組の連中が向かっている様で」
「見廻組が?」

 その報告に、沖田は眉間にしわを寄せた。