いつからすきだったのか。考えてみた。
見合い事件の日まで(俺の中では事件扱い)、華取咲桜はただの生徒だった。俺たち三人にとって恩人の一人である華取在義さんの愛娘。それは知っていたので、私情を挟んでは関わらないようにしていた。一生徒と親しくなるのは面倒だったし、自分が関わる面倒ごとに巻き込むのも嫌だった。
学校での印象は、活発だけど大人しい子、だった。背は平均より高く容姿は大人びている。派手ではなく落ち着いた雰囲気。私服だったら社会人でも通用するだろう。それだけだった。
見合い事件の場で華取咲桜を目にして、愛子を殴りたいくらい驚いた。なんでよりによって生徒を連れてくるか、このトラブルメーカーは。
縁談を断らないが、受けもしないを提示した段階では、本当にただの利害一致の協力者でしかなかった。お互い、愛子関係の面倒は避けたいというそれだけだった。なのに。
愛子の口から、咲桜は権力的利用価値があると聞いて頭の中のどこかが変わった。心の中のどこかかもしれない。
とにかく、華取咲桜がそんなことに利用されるのはゆるせなかった。この子が心無い思いをするのが嫌だと思った。
――この時点でもう、俺にとっては『咲桜』だったのだと思う。