私が恋愛関係に幼いから、だろうか。自分の気持ちを伝えることで、流夜くんは合わせてくれている。そんなことが、なんとなくだけどわかっている。
「咲桜……その、無理させてたらすまない」
流夜くんはそう考えてしまう自分を責める。どこまで甘い人なんだ。
だから、私から抱きしめ返すことで応える。
「……そんなこと、ないよ。私はちゃんと答えてもないのに」
曖昧な形を、また見つけてしまった。流夜くんはそれでいいと言ってくれたけど。……今、答えを求めている。自分の中に。
そんな私に、流夜くんはまたささやく。
「……こうして傍にいてくれたら、それだけでいいんだ」
微かな声。
流夜くんの願いを、私は叶えられる人なんだろうか。もっと相応しい人はいると思う。私なんかより美人さんで、流夜くんくらい頭がよくて、もっと同じ目線に立てる人は。
………いやだ。
そんな言葉が頭に浮かんで思わず抱きしめ返したときに気づいた。……また眠っちゃってる。やっぱり眠いことは眠かったみたい。少しだけ、苦笑がもれた。
大分すきの、上はなんなんだろう。抱き寄せていると、指先が流夜くんの髪に触れる。流夜くんはよく頭を撫でてくれる。私は小さな頃から背が高い方だったから、新鮮な感覚だった。ただ嬉しくなる。……そっと、手のひらで髪に触れてみる。
……誰かをすきなることを、自分にゆるさないでいた。
自分が生きていることに否定的だったし、自分の命は在義父さんへの恩返しに使うつもりだった。だから、すきな人はいらなかった。作らなかった、ではなくて、いらなかった。
でも今、私の傍には流夜くんがいる。
……ひとつだけ、思いあたった言葉がある。これが私の感情なのだろうか。
《流夜くんを、私が幸せにしたい。》
「……これで、いいのかな……」
流夜くんと同じ気持ちは、これなのかな。
……そうだったらいいな。
腕の中で眠る優しい人が目を覚ましたら、訊いてみよう……。