咲桜の爆弾発言。

せめてドキドキしてほしかった。

なんでドクドクしてんだ。色んな意味で大丈夫だろうか、この子は。けれど……そういうことだったのか?

抱き寄せると、やはり戸惑ってしかいなかった。でも、こうすることを咲桜にゆるしてほしかった。

……眠れることにはあまり縁がなかった。

物心もなにもない頃に家族を失い、当てもなく親戚をたらいまわしにされた。

吹雪の地元であり、龍さんの祖父の許である天龍(てんりょう)に引き取られたのは、小学校に入る直前の頃だった。

龍さんとは親戚関係も何もなかったけれど、龍さんが当時刑事だった縁で知り合うことが出来た。

幼少時は、知らない人たちに疎まれながら、安穏と眠ることなど出来なかった。

体面上引き取っただけの人たち。一人だけ生き残った赤子。犯人が捕まっていないことで、相手側も不安や恐怖心があっただろう。

今を割かし楽しく生きているから、当時の彼らに文句はないし責める気持ちもない。

こんな面倒しか抱えていない子どもを、一時でも匿ってくれたことに感謝している。

けれど、どう扱っていいのか困っている口調、冷たい瞳、あたたかさのない空間。ずっと冷えた心で、穏やかな眠りは訪れてはくれなかった。

だから、咲桜がいた夜に自分でも信じられないほど熟睡していたことは、安心感を与えてくれた。訪れる闇に一人でないと思えたのは初めてだった。

ずっと、あの日がまた来たらいいと思っていた。在義さんという親バカの壁はいたく大きいが、咲桜が傍にいてくれるためだったらなんだって出来そうだ。