まさかこんな早く逢えない時間に陥ってしまうとは思わなかった。……俺がそれを見ているのに気付いた咲桜は自分の手を触れさせ、目を閉じた。
「……ありがとう。やっぱり流夜くんはすごいね。……一人にならないようにしてくれるんだから」
お守りだと言って、渡した。立場上、どうしても傍にいられないときもあるから、と。
……こういう意味で引き離されるとは思ってもいなかったけど、結果的に咲桜の助けになったようでよかった。
「咲桜……」
呼びかけられると、閉じてしまっていた咲桜の瞼があがる。
柔らかな空気が満ちる。近づく。――もっと近づきたい。
俺たちの間に距離はもうない。咲桜も流れる雰囲気に抗わない。
触れることを、躊躇う理由がない――
「てめえ神宮! 俺んとこにガキ送り込んだのお前だろう! すっげえ怖いんだけど!」
若干剥かれた遙音が飛び込んできた。
「………」
遙音は中の様子――咲桜が俺の膝に座って抱き寄せられ、甘ったるい雰囲気でいるのを見て固まった。
「……失礼しました」
そろりと扉が閉められた。
「全くだ」
「――じゃねーよ! なにしてんだてめえら!」
秒間もなく扉がぶち開けられ、すさまじい形相の遙音が怒鳴り込んできた。
「学校でいちゃついてんなよ! 咲桜! お前も止めろよ! 神宮を放っちゃダメだ!」
「えっ、ごめんなさい!」
「てか神宮! お前ロリコンだったのか⁉ 学生時代も荒れてたけど今のはハンパねえよ!」
「んなわけあるか。それより邪魔すんな、出てけ」
「続きする気か⁉」