探ろうと思えば過去の新聞記事なんかからは簡単に見つかる、結構大きく取り上げられた事件だった。

俺の方は特に隠してないんだけどな……。

たとえ聞かされても気分を害すだけだと、自ら話すようなことでもないと思っているので、誰かに話したのは咲桜を入れて二人だけ。

しかし詮索されれば、面倒にならないうちに話すことを厭(いと)わない。

なので、それが日義に知られても別段咲桜が気負う必要もないのだが、どうもそれも違うらしい。

ふと、前方に目がいった。

一階の廊下。登校してきたらしい影があった。

今もっとも警戒すべき姿。咲桜と自分の関係を知っているかもしれない存在。

日義はいつも通りだるそうな顔で、特に俺を気にした様子もない。

……教師とは気付かれていないのか?

足を停めることもなく前へ進む。

「咲桜が隣にいるの、お似合いですよ。神宮先生」

すれ違いざまに囁かれた。

ともすれば、警戒するあまり自分の脳が作り出した幻聴にも聞こえたが、微かに振り返った時に見えた日義の横顔は、言葉を発したのは自分だと言っていた。

咲桜の隣。ばれている。

咲桜の彼氏とは、俺であると。