突然のカミングアウトに、その場の空気が一瞬にして凍った。薄氷の上にいるような感覚に息が詰まる。
(婚約者を殺されてるって……どういうことだよ)
彼の婚約者はひがし京で、二人は幸せになるはずなのだ。……そのはずなのに。顔を青ざめている彼は、戸惑うように目線を彷徨わせる。わかりやすい反応に、僕は察してしまう。
「元婚約者の方は竹三さんですか。ホウソウシの毒牙にかかったんですかね」
「な、ぜ……それを」
「そりゃあ、俺には見えてるからな!」
ふんっと胸を張る探偵少年。ほのぼのしたその反応に、しかし周囲の人間は和むどころか凍る空気は溶ける様子も無い。それどころか鋭い空気は更に鋭利になり、周囲の人間を突き刺していく。岡名は俯き、拳を握りしめる。その様子に僕は察してしまった。──探偵少年の言っていることが本当のことであることを。しかし我関せずと言わんばかりに、探偵少年は言葉を続ける。
「そのホウソウシって奴に復讐するため、あなたはひがしと婚姻を結んで、ホウソウシを雇った。違いますか?」
「……」
「しかし、予想以上にホウソウシの力が強かった。気がつけば収集がつかなくなったあんたは、俺たちに助けを求めに来た。そうだろ?」
「そ、れは」
「……本当なの、それ」
躊躇う岡名に食いついたのは、ずっと彼の隣に立っていたひがし京だった。不安げな顔をする彼女は、震える指先を胸前で合わせた。全身から漂う悲し気な雰囲気に、僕は息を飲む。しかし彼女の境遇を考えれば、それも頷ける。
(生まれた時から盲目で大変なはずなのに、嫌がらせされ、婚約者には利用され……そんなの、散々じゃないか)
「なんで……そんなの、そんなのってないわ……!」
「ま、真偉、落ち着いて」
「やあっ! さわんないで!」
ぶんぶんと腕を振り回し、威嚇した彼女はずるずるとその場に泣き崩れる。ひがし京に伸ばされた岡名の手が、乱雑に振り払われた。
乾いた音が響き、岡名が驚きに目を見開く。ボロボロと涙をこぼすひがし京の傍に駆け寄ったのは、朝真だった。手を差し伸べる彼女の表情は、困惑に満ちている。
「真偉……」
「朝真……っ。うっ、うぅっ」
凛とした女性が、周囲を気にせず涙をこぼす。場違いにもそれが綺麗だと思ってしまったのは、許して欲しい。白い髪がひがし京の表情を覆い隠す。その様子に狼狽えた岡名は、どうしたらいいのかと二の足を踏んでいる。ちゅう秋が一歩踏み出し、岡名の肩に手を乗せる。びくりと震えた肩は、ちゅう秋の声に押し留められた。
「岡名さん」
「……わかってるよ」
(婚約者を殺されてるって……どういうことだよ)
彼の婚約者はひがし京で、二人は幸せになるはずなのだ。……そのはずなのに。顔を青ざめている彼は、戸惑うように目線を彷徨わせる。わかりやすい反応に、僕は察してしまう。
「元婚約者の方は竹三さんですか。ホウソウシの毒牙にかかったんですかね」
「な、ぜ……それを」
「そりゃあ、俺には見えてるからな!」
ふんっと胸を張る探偵少年。ほのぼのしたその反応に、しかし周囲の人間は和むどころか凍る空気は溶ける様子も無い。それどころか鋭い空気は更に鋭利になり、周囲の人間を突き刺していく。岡名は俯き、拳を握りしめる。その様子に僕は察してしまった。──探偵少年の言っていることが本当のことであることを。しかし我関せずと言わんばかりに、探偵少年は言葉を続ける。
「そのホウソウシって奴に復讐するため、あなたはひがしと婚姻を結んで、ホウソウシを雇った。違いますか?」
「……」
「しかし、予想以上にホウソウシの力が強かった。気がつけば収集がつかなくなったあんたは、俺たちに助けを求めに来た。そうだろ?」
「そ、れは」
「……本当なの、それ」
躊躇う岡名に食いついたのは、ずっと彼の隣に立っていたひがし京だった。不安げな顔をする彼女は、震える指先を胸前で合わせた。全身から漂う悲し気な雰囲気に、僕は息を飲む。しかし彼女の境遇を考えれば、それも頷ける。
(生まれた時から盲目で大変なはずなのに、嫌がらせされ、婚約者には利用され……そんなの、散々じゃないか)
「なんで……そんなの、そんなのってないわ……!」
「ま、真偉、落ち着いて」
「やあっ! さわんないで!」
ぶんぶんと腕を振り回し、威嚇した彼女はずるずるとその場に泣き崩れる。ひがし京に伸ばされた岡名の手が、乱雑に振り払われた。
乾いた音が響き、岡名が驚きに目を見開く。ボロボロと涙をこぼすひがし京の傍に駆け寄ったのは、朝真だった。手を差し伸べる彼女の表情は、困惑に満ちている。
「真偉……」
「朝真……っ。うっ、うぅっ」
凛とした女性が、周囲を気にせず涙をこぼす。場違いにもそれが綺麗だと思ってしまったのは、許して欲しい。白い髪がひがし京の表情を覆い隠す。その様子に狼狽えた岡名は、どうしたらいいのかと二の足を踏んでいる。ちゅう秋が一歩踏み出し、岡名の肩に手を乗せる。びくりと震えた肩は、ちゅう秋の声に押し留められた。
「岡名さん」
「……わかってるよ」