「そうですね。燃やしたのが、本当にあなたたちの使用した紙であれば、ですけど」
(――もしかして)
ちゅう秋の言葉に、僕はハッとする。……もし。もし誰かが燃やす前に紙を入れ替えていたとしたら。知らず知らずのうちにただの紙を燃やし、安堵した彼女たちのこっくりさんは今でも続いているという事になる。
(こわっ……!)
背中に一気に悪寒が走る。彼女たちも何かを察したようで、かわいそうなほど顔が青白くなっていた。
「そして、この紙に宿る力を辿って、ホウソウシがあなたたちを襲い続けている。うわんが夢の中に来たのも、貴方達の記憶から入り込んだのでしょうね」
にこりと完璧な笑みを浮かべる彼に、頬が引き攣る。安心させようとしているのか、怒っているのかはわからないが、それが余計に恐怖を煽っているのに、彼は気がついているのだろうか。──否、気づいていてやっているのだろう。彼はそういう人間だ。
「はははっ! なるほど、そういう事か!」
あははは、と笑い声を上げる人物に視線を向ける。そこではずっと話を聞いていた探偵少年が、一人で高らかに笑みを浮かべている。今にも腹を抱えそうな彼に、僕は目を釣りあげた。
「お、おいっ! 今の笑うところじゃないだろ!」
がっしりと掴んだ肩を引き寄せ、未だ笑う探偵少年に怒りをぶつける。流石にやっていいことと悪い事がある。
(しかもホウソウシは生きた人間。犯罪者。……そんな人間の手に知らないうちに渡って被害を受けていたなんて)
彼女たちの立場としては、納得したくない事でしかないだろう。しかし、少年はそれがどうしたとばかりに首を傾げ、僕の手を払う。途端、真面目な顔になった彼はわざとらしく肩を落とす。
「笑うところだろ。──だってこれで、犯人は一人しかいないわけなんだから」
「えっ」
少年の言葉に僕は唖然とする。──犯人が一人しかいない?
(そんなの、わかるわけが……)
「だってそうだろ。四人の一番近くにいて、全員のことをよく知っている余所者の人間。一人になる機会は多く、そのホウソウシって犯罪者とも会える人間は一人しかいない」
ふと、探偵少年の視線が一人の人間に向く。その瞬間、僕は彼の言いたいことを全て理解した。
「──なあ、岡名さん」
彼の声に、岡名の目が見開かれる。それは図星とも不意打ちに驚いたとも言える反応で、しかし少年の言いたいことはしっかりと伝わったらしい。
「な、にをいって」
「岡名さん、あんた昔婚約者を殺されてるだろ」
「──!」