次点で込み上げてくるというのならば、変な奴、ということだけだろう。どちらにせよ、彼の言っていることは一般人である自分には理解しえないことばかりで。
「うわぁとはなんだ、うわぁとは。立派な理由ではないか!」
「いやぁ、だって。それなら仏教とか、孔子って言われた方がまだわかるし」
「ふんっ、孔子も仏教も俺は知らん。せめてマッカーサー教って言ってくれ」
「絶対知ってるでしょ、その口ぶり」
はぁと、本日何度目になるか分からないため息を吐く。
(変な奴に捕まっちゃったな……)
ただ友人を待っていただけなのに、どうしてこんなことになったのか。頭が痛くなってくる。
「嗚呼もう。いいよいいよ、何でも。それで? 依頼って何? 僕は何をしたらいいんだ?」
「依頼をくれ!」
「いやっ、そんな急に言われても……」
キラキラと輝く笑みを浮かべる彼に、もうどうしたらいいのか分からなくなる。本当に厄日だ、今日は。
(早く帰ってきてくれ、ちゅう秋……!)
友人の姿を思い出し、心の中で願う。変人だが頭のいい友人ならば、この状況を打開できるに違いない。
「お待たせ……って、何してるんだい?」
「ちゅう秋……!」
まさに天からの声とばかりに、教室内へと入ってくるちゅう秋に視線を向ける。
「委員会はもう終わり?」
「ああ。思ったより長くなってしまったけど無事にね。それより……彼は?」
「えっ? ええっと」
「僕は神だ!」
「え?」
「あはは……」
キョトンとするちゅう秋に、僕は苦笑を浮かべるしか出来なかった。僕自身、まだ彼の名前を知らないのだ。そうなってしまうのも、当然だろう。
(というか、結局彼は誰なんだ?)
「僕はこの街で探偵業をしている! 何か困ったことがあったら、ぜひこの俺に!」
「口調、崩れてるぞ」
「おっと。それはいかんいかん」
「……随分変わった子だね」
「僕は神だからな」
「そうなんだ」
にこりと笑みを浮かべるちゅう秋に、ご機嫌そうに笑う彼は、自分が如何に神に近い存在であるかを語り出した。もちろん興味なんて湧かず、呆れながらもちゅう秋に目を向ければ、笑顔を携えたまま頷いている。小難しい専門用語をつらつらと宣う探偵少年の話を、よく笑顔で聞いていられるものだと感心してしまう。
(僕には絶対にできないなぁ……)
そもそも、神頼みすることなんてそう多くないし、願ったところで叶うわけもない。……言っていて虚しくなるなぁ。
「つまり、君は依頼をしてくれる人を探していると。そういうことでいいんだね?」