「コピー機……!」
別名、複写機。同じものを複製するための機械だ。
(本当にあるなんて……!)
発売されてからそう年月が経っていないそれは、未だ大きな会社や新聞社でしかお目にかかれない代物だ。普通の家庭で過ごしていれば、見る機会もないであろう高級品が、目の前にある。その事実に、興奮が一気に込み上げてくる。
(す、凄い……!)
物珍しさに、思わずまじまじと機材を見てしまう。机に乗るような小さなそれは、確か卓上式のものだったはず。触れるなんて恐れ多い。僕が首を傾げたり顔を近付けたりしながら眺めていれば、ふとコピー機に誰かの手が添えられた。──瞬間、パキリと外れた外装に息を飲む。
「なっ……!?」
(何してるんだこいつは!!)
外装がべろりと外れ、機材の中が見える。その光景にサッと血の気が引いていった。そんな僕の心情も知らず、探偵少年はコピー機を持ち上げたり覗き込んだりと動かし出す。その手はどこか乱雑で心臓がはち切れそうだ。
「お、おまっ! こ、これっ、壊しっ!?」
「? 何を慌ててるんだ?」
「──~っ!」
こてりと首を傾げる探偵少年に、殺意にも似た激情が走る。ガッと探偵少年の胸ぐらを掴み上げ、ガクガクと前後に思い切り揺する。探偵少年が苦しそうにしているが、気にしている余裕は全くない。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! どうすんだこれっ! これっ、これ……どうするんだよ!」
「な、なにがっ……!」
「何って、見てわかるだろ!? 壊しやがって! ほら見ろ、中身見えてるだろーが! 凄い高そうだったのに……直せなかったらお前のせいだからな!?」
「だ、からっ、壊れてな……っ」
「ああああ…………どうするんだよ。僕これ以上小遣い減らされたら本買えなくなる……死活問題だ……」
手元に残っているお金と毎月貰っている僅かな小遣いを思い出し、頭が痛くなる。欲しい本はまだまだたくさんあるというのに。
(お先真っ暗だ……)
絶望に絶望が重なった状況に、涙すら出そうだった。込み上げる感情を必死で押さえ込んでいれば、探偵少年を持ち上げていた手がバシバシと叩かれた。思いの外強いそれに、ハッとした僕は慌てて手を離した。
「くる、し……」
「あっ、ご、ごめん」
手を離せば、どさりと床に落ちる探偵少年。ゲホゲホと盛大に咳き込む彼に、流石に心配になってくる。
「だ、大丈夫か?」
「あ゛ー……ごほっ。うん、大丈夫」
ハッと息を吐いた探偵少年が、苦い顔で笑みを浮かべる。喉を何度か鳴らした彼に持って来た水筒を差し出せば、ごくごくと凄い勢いで中身を飲んでいく。その様子に罪悪感が込み上げてくる。
別名、複写機。同じものを複製するための機械だ。
(本当にあるなんて……!)
発売されてからそう年月が経っていないそれは、未だ大きな会社や新聞社でしかお目にかかれない代物だ。普通の家庭で過ごしていれば、見る機会もないであろう高級品が、目の前にある。その事実に、興奮が一気に込み上げてくる。
(す、凄い……!)
物珍しさに、思わずまじまじと機材を見てしまう。机に乗るような小さなそれは、確か卓上式のものだったはず。触れるなんて恐れ多い。僕が首を傾げたり顔を近付けたりしながら眺めていれば、ふとコピー機に誰かの手が添えられた。──瞬間、パキリと外れた外装に息を飲む。
「なっ……!?」
(何してるんだこいつは!!)
外装がべろりと外れ、機材の中が見える。その光景にサッと血の気が引いていった。そんな僕の心情も知らず、探偵少年はコピー機を持ち上げたり覗き込んだりと動かし出す。その手はどこか乱雑で心臓がはち切れそうだ。
「お、おまっ! こ、これっ、壊しっ!?」
「? 何を慌ててるんだ?」
「──~っ!」
こてりと首を傾げる探偵少年に、殺意にも似た激情が走る。ガッと探偵少年の胸ぐらを掴み上げ、ガクガクと前後に思い切り揺する。探偵少年が苦しそうにしているが、気にしている余裕は全くない。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! どうすんだこれっ! これっ、これ……どうするんだよ!」
「な、なにがっ……!」
「何って、見てわかるだろ!? 壊しやがって! ほら見ろ、中身見えてるだろーが! 凄い高そうだったのに……直せなかったらお前のせいだからな!?」
「だ、からっ、壊れてな……っ」
「ああああ…………どうするんだよ。僕これ以上小遣い減らされたら本買えなくなる……死活問題だ……」
手元に残っているお金と毎月貰っている僅かな小遣いを思い出し、頭が痛くなる。欲しい本はまだまだたくさんあるというのに。
(お先真っ暗だ……)
絶望に絶望が重なった状況に、涙すら出そうだった。込み上げる感情を必死で押さえ込んでいれば、探偵少年を持ち上げていた手がバシバシと叩かれた。思いの外強いそれに、ハッとした僕は慌てて手を離した。
「くる、し……」
「あっ、ご、ごめん」
手を離せば、どさりと床に落ちる探偵少年。ゲホゲホと盛大に咳き込む彼に、流石に心配になってくる。
「だ、大丈夫か?」
「あ゛ー……ごほっ。うん、大丈夫」
ハッと息を吐いた探偵少年が、苦い顔で笑みを浮かべる。喉を何度か鳴らした彼に持って来た水筒を差し出せば、ごくごくと凄い勢いで中身を飲んでいく。その様子に罪悪感が込み上げてくる。