自分が悩んでいる時にあんなにも落ち着いていたのは、彼にそういった側面があったからかもしれない。
(確かに、婚約している人からしたら、僕の悩みなんて小さなものだよな……)
恥ずかしいような、そうでもないような。複雑な心境に眉を寄せていれば、ふと岡名と視線が合う。はにかんだ彼は、やはり大人の余裕のようなものが垣間見えた。
「その婚約者が朝紀さんの姉、京真偉(みやこまさい)。ペンネームは『ひがし京』」
「ひがし……」
「彼女は先天性の盲目で、全盲なんだ。不治の病とも言われていてね」
「なるほど」
岡名の説明に、僕はこくこくと頷く。先天性の盲目……つまり、生まれた時から目が見えていないという事だ。
(生まれた時から視界がないなんて、想像できないな)
自分が今当然として持っているものが急に無くなるなんて、想像することも出来ない。
「俺が支えなきゃって、俺から婚約を申し込んだんだ」
「へえ」
「ちなみに朝紀さんとは腹違いの姉妹だけど、仲は良好。家で虐げられている様子もない」
「急に重い情報出すなよ……」
淡々と情報を口にする探偵少年に、僕は頬を引き攣らせた。そりゃあ、全盲じゃあかなり大変だろうけど。それと家族仲の良し悪しは関係がないだろう。戦時中じゃないのだから。
「ははは。まあでも、幼少期はかなり悲惨な時間を過ごして居たみたいでね……。ちょっと人が苦手な面があるんだ。あった時何か失礼をしてしまったらごめんよ」
「そうなんですね」
「俺は気にしないがな!」
「だろうな。まあ、僕も気にしないけれど」
「ははは」
「そうしてくれると助かるよ」と言う岡名は、どこか嬉しそうに微笑む。以前も思ったが、彼はどうやら自身の感情を伝えようとした時に口調が崩れる傾向があるらしい。個人的にはそっちの方が気楽でいいのだが、本人も無意識のうちに代わっているようだし、わざわざ伝える必要もないだろう。
(時が来たら言うとしようか)
「そして、彼女たちと同級生の京紀偉(みやこきえら)さんと京(みやこ)朝(あさ)真(ま)さんの四人が『みやこ』のメンバーっす」
「それぞれ、『みなみ京』、『きた京』のペンネームを持っているよ」
「なるほど。全員苗字が“京(みやこ)”だから、サークル名が『みやこ』なのか」
「そういうことだな!」
「さすが!」と囃し立てる探偵少年の言葉に、素直に喜べないのはどうしてか。にこにこと笑みを浮かべる彼に、僕は眉を寄せると岡名の方へと視線を向けた。こちらの気持ちを察したらしい彼は、苦笑いを浮かべると話を続けた。
(確かに、婚約している人からしたら、僕の悩みなんて小さなものだよな……)
恥ずかしいような、そうでもないような。複雑な心境に眉を寄せていれば、ふと岡名と視線が合う。はにかんだ彼は、やはり大人の余裕のようなものが垣間見えた。
「その婚約者が朝紀さんの姉、京真偉(みやこまさい)。ペンネームは『ひがし京』」
「ひがし……」
「彼女は先天性の盲目で、全盲なんだ。不治の病とも言われていてね」
「なるほど」
岡名の説明に、僕はこくこくと頷く。先天性の盲目……つまり、生まれた時から目が見えていないという事だ。
(生まれた時から視界がないなんて、想像できないな)
自分が今当然として持っているものが急に無くなるなんて、想像することも出来ない。
「俺が支えなきゃって、俺から婚約を申し込んだんだ」
「へえ」
「ちなみに朝紀さんとは腹違いの姉妹だけど、仲は良好。家で虐げられている様子もない」
「急に重い情報出すなよ……」
淡々と情報を口にする探偵少年に、僕は頬を引き攣らせた。そりゃあ、全盲じゃあかなり大変だろうけど。それと家族仲の良し悪しは関係がないだろう。戦時中じゃないのだから。
「ははは。まあでも、幼少期はかなり悲惨な時間を過ごして居たみたいでね……。ちょっと人が苦手な面があるんだ。あった時何か失礼をしてしまったらごめんよ」
「そうなんですね」
「俺は気にしないがな!」
「だろうな。まあ、僕も気にしないけれど」
「ははは」
「そうしてくれると助かるよ」と言う岡名は、どこか嬉しそうに微笑む。以前も思ったが、彼はどうやら自身の感情を伝えようとした時に口調が崩れる傾向があるらしい。個人的にはそっちの方が気楽でいいのだが、本人も無意識のうちに代わっているようだし、わざわざ伝える必要もないだろう。
(時が来たら言うとしようか)
「そして、彼女たちと同級生の京紀偉(みやこきえら)さんと京(みやこ)朝(あさ)真(ま)さんの四人が『みやこ』のメンバーっす」
「それぞれ、『みなみ京』、『きた京』のペンネームを持っているよ」
「なるほど。全員苗字が“京(みやこ)”だから、サークル名が『みやこ』なのか」
「そういうことだな!」
「さすが!」と囃し立てる探偵少年の言葉に、素直に喜べないのはどうしてか。にこにこと笑みを浮かべる彼に、僕は眉を寄せると岡名の方へと視線を向けた。こちらの気持ちを察したらしい彼は、苦笑いを浮かべると話を続けた。