「僕は、神だ!」
「お兄ちゃーん、ごはーん!」
――時は昭和。場所は日本国内某所。
キラキラと照りつける朝日に、探偵少年は清々しい笑みを浮かべる。後ろから可愛い妹が自身を呼ぶ声を聞き、探偵少年は身を翻した。自身を「探偵だ」と告げる彼は、学業の傍ら、趣味で探偵のような事をしていた。
「ご飯は?」
「大盛り!」
「相変わらず、よく食べるわねぇ」
祖母の優しい表情に、探偵少年の心が暖かくなる。丼で渡される米を受け取り、両手を合わせた彼は整った顔を大きく歪めて朝食を頬張る。柔らかい米と、丁度いい塩加減で出された焼き魚は、いつも通り美味である。
(今日の体調もこれで万全だな!)
──シャーロックや明智と比べると劣る。けれどそれは、自分がまだ“子供“だからだと探偵少年は思っている。彼は、自身は天才ではないと理解しているのだ。だからこそ、日々の努力が生きてくると探偵少年は日々空を見上げる。見るべきは後ろでも足元でもない。自身の遥か前! 鮮やかなまでの青空である!
「だから、俺に弱点は必要ない!」
「弱点って……あんたそんなこと言ってるから変人って言われるのよ」
「別に、気にしていない!」
「あんたが気にしてなくても、こっちが気になるのよ」
呆れたようにため息を吐く少女──隣の家の住民に、探偵少年は堂々と言い放つ。
「大体、愛だの恋だのと浮ついてる奴らと俺は違うんだ。常に突き進む! 夢へと真っ直ぐに!」
「はいはい」
「あとで彼女欲しい~なーんて言わないでよね」と呆れ顔で探偵少年を見る彼女は、高い位置で結んだポニーテールを揺らして肩を落とす。……性格さえ除けば、美形でスタイルも悪くない、優良物件なのに。桜の下、並んで歩く腐れ縁のような彼を盗み見て、「勿体ない」と幾度めかもわからぬ溜め息を吐いた。
そんな彼女の心の内を知ることも無く、探偵少年は興味津々に桜を眺める。今年も逞しく、鮮やかに咲いたピンク色の花は、人の心を癒してくれる。
「今年も素晴らしいな!」
「……本当、喋らなければ最高なのに」
「何か言ったか?」
「何でもない」
ふるりと首を振る少女に、探偵少年は首を傾げる。しかし、少女は何も言うことなく歩く足を早めた。置いていかれないよう、慌てて足を早め、探偵少年はこれから自身の通う学び舎をその目に映した。
広く高く聳え立つ学び舎は、出来てから年月が経っていないからかまだ綺麗なまま。校舎の門前では、学校の先生らしき男性が腕を組んで立っている。生徒指導か、それとも自身の担任となる教師か。どちらか分からないこの感覚に、興奮が胸の内に沸き立つ。
(これからどんな依頼が俺を待っているのか……!)
込み上げる期待と熱量に押されるように、制服を身にまとった探偵少年少女は足を早めた。
「お兄ちゃーん、ごはーん!」
――時は昭和。場所は日本国内某所。
キラキラと照りつける朝日に、探偵少年は清々しい笑みを浮かべる。後ろから可愛い妹が自身を呼ぶ声を聞き、探偵少年は身を翻した。自身を「探偵だ」と告げる彼は、学業の傍ら、趣味で探偵のような事をしていた。
「ご飯は?」
「大盛り!」
「相変わらず、よく食べるわねぇ」
祖母の優しい表情に、探偵少年の心が暖かくなる。丼で渡される米を受け取り、両手を合わせた彼は整った顔を大きく歪めて朝食を頬張る。柔らかい米と、丁度いい塩加減で出された焼き魚は、いつも通り美味である。
(今日の体調もこれで万全だな!)
──シャーロックや明智と比べると劣る。けれどそれは、自分がまだ“子供“だからだと探偵少年は思っている。彼は、自身は天才ではないと理解しているのだ。だからこそ、日々の努力が生きてくると探偵少年は日々空を見上げる。見るべきは後ろでも足元でもない。自身の遥か前! 鮮やかなまでの青空である!
「だから、俺に弱点は必要ない!」
「弱点って……あんたそんなこと言ってるから変人って言われるのよ」
「別に、気にしていない!」
「あんたが気にしてなくても、こっちが気になるのよ」
呆れたようにため息を吐く少女──隣の家の住民に、探偵少年は堂々と言い放つ。
「大体、愛だの恋だのと浮ついてる奴らと俺は違うんだ。常に突き進む! 夢へと真っ直ぐに!」
「はいはい」
「あとで彼女欲しい~なーんて言わないでよね」と呆れ顔で探偵少年を見る彼女は、高い位置で結んだポニーテールを揺らして肩を落とす。……性格さえ除けば、美形でスタイルも悪くない、優良物件なのに。桜の下、並んで歩く腐れ縁のような彼を盗み見て、「勿体ない」と幾度めかもわからぬ溜め息を吐いた。
そんな彼女の心の内を知ることも無く、探偵少年は興味津々に桜を眺める。今年も逞しく、鮮やかに咲いたピンク色の花は、人の心を癒してくれる。
「今年も素晴らしいな!」
「……本当、喋らなければ最高なのに」
「何か言ったか?」
「何でもない」
ふるりと首を振る少女に、探偵少年は首を傾げる。しかし、少女は何も言うことなく歩く足を早めた。置いていかれないよう、慌てて足を早め、探偵少年はこれから自身の通う学び舎をその目に映した。
広く高く聳え立つ学び舎は、出来てから年月が経っていないからかまだ綺麗なまま。校舎の門前では、学校の先生らしき男性が腕を組んで立っている。生徒指導か、それとも自身の担任となる教師か。どちらか分からないこの感覚に、興奮が胸の内に沸き立つ。
(これからどんな依頼が俺を待っているのか……!)
込み上げる期待と熱量に押されるように、制服を身にまとった探偵少年少女は足を早めた。