生気を亡くした聖來の様子に、桂太がこぶしを握り締める。

「僕は、聖來ちゃんをこんな風に泣かせるためにアイドルになってって言ったんじゃない!」

 今まで大きな声など出したことがないような桂太が突如叫ぶ。その勢いに聖來は驚き、圧倒された。怒りに震えた声で、桂太は続ける。

「今日聖來ちゃんにひどいこといったおじさん連れてきて。本当に殴りたい。ぼこぼこにしないと気が済まない」
「桂……ちゃん……?」

 無論、生まれてこの方喧嘩のような野蛮なこととは桂太は無縁で生きてきた。ただ、目の前の大切な女の子を傷つけられたことが許せなかった。

「本当に、こんなつもりじゃなかった……ただ、楽しそうに歌って踊ってる聖來ちゃんが好きだっただけなのに」

 桂太は聖來の手を強く握りしめ、自分の無力さに震える。