そうして意味もなく窓の外を眺めるのにも飽きた頃、私は席替えで隣になった瀬川とよく話すようになった。


瀬川は私より早い時期に推薦で大学を決めていて、私と同じく、残り時間を手持ち無沙汰に過ごしていた。


瀬川とはそれまで殆ど言葉を交わしたことがなかった。
でも、お互いに後ろめたさとか、居心地の悪さとか、そういうものを抱えた同志だと、何処かで感じていたのかもしれない。


いつの間にか、一人で過ごしていた放課後は二人になった。
教室の最後列、窓際から二番目の席が、独りぼっちじゃなくなった。


卒業まで残り一ヶ月になって、まさかこの小さな平穏を得られるとは思ってもみなかった。
でも事実、私は今もいつか懐古するであろう日々で編まれた揺籃(ゆりかご)に揺られている。