私たちは三年間通った高校をもうすぐ卒業して、束の間の青春に幕を閉じようとしていた。


あと一ヶ月もすれば制服を脱いで、当たり前のように大学生の顔をする。
高校生だったはずの自分を忘れてしまったみたいに。
或いは大して昔でもない日々を、懐かしい懐かしいと繰り返すのかもしれない。


そんな曖昧な冬の終わり。
早々にAO入試で受験を終えた私は、唐突にやってきた暇を持て余していた。


クラスメイトの大半は受験も大詰めでピリピリしていて、仲の良い友達とも気軽に話せない。
あんなに一言一句逃さず閉じ込めていたノートは生真面目に取る必要がなくなって、授業が悠久に感じるようになった。


特に金曜7限の倫理の授業は、受験科目としてではなく、単位取得のために選択した生徒が多いので、先生もやる気がない。
一番退屈で、一番苦手な時間だった。
ぼんやりするくらいしか、することが無い。