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「これをもちまして、第六十四回西辰高校卒業式を閉式いたします」
厳かな定型文にも感慨深さが滲み、目の縁がじんわり熱を持つ。
入学式も、ちょうどここで執り行われたのだと記憶を辿ると、誇らしさと寂しさが入り混じって、なんとも言えない温かさが心に広がった。
思い出が詰まった体育館に後ろ髪を引かれながら、拍手の花道を抜ける。
外に出ると、私は同じ制服の中から、何度も隣を歩き見慣れた姿を探した。
瀬川が帰ってしまわないように、最後のHRの前に、話があると伝えておきたかった。
校門のすぐ傍では、色とりどりの花を手にした下級生たちが、部活ごとに固まって先輩がやってくるのを待っている。
三年間帰宅部だった私は、その中の誰からも餞を貰うことはない。多分、瀬川も。
「これをもちまして、第六十四回西辰高校卒業式を閉式いたします」
厳かな定型文にも感慨深さが滲み、目の縁がじんわり熱を持つ。
入学式も、ちょうどここで執り行われたのだと記憶を辿ると、誇らしさと寂しさが入り混じって、なんとも言えない温かさが心に広がった。
思い出が詰まった体育館に後ろ髪を引かれながら、拍手の花道を抜ける。
外に出ると、私は同じ制服の中から、何度も隣を歩き見慣れた姿を探した。
瀬川が帰ってしまわないように、最後のHRの前に、話があると伝えておきたかった。
校門のすぐ傍では、色とりどりの花を手にした下級生たちが、部活ごとに固まって先輩がやってくるのを待っている。
三年間帰宅部だった私は、その中の誰からも餞を貰うことはない。多分、瀬川も。