私たちは受付でドリンクバー付きのフリータイムを注文して、真四角の部屋に雪崩込んだ。
真っ白だった世界が急に仄暗くなる。
目の前が黒く塗り潰されるくらい、目がチカチカした。


いっそもっと浸ってしまおうと何となく付けたミラーボールは、その黒の中でパチパチと弾ける。


「ドリンクバーコールドしかねぇじゃん」
「私メロンソーダがいい」
「適当に曲入れてて。取ってくる」


リュックとスクバは、ぞんざいにソファーの端へと投げられる。
私は端末を手に取ると、流行りの曲を上から順に適当に入力していった。
知らない曲は瀬川に任せるか、飛ばしてしまえばいい。


暫くするとスピーカーからイントロが流れ出す。
小気味のいいギターから始まるジャズ調の失恋ソングだ。
キャッチーな女性ボーカルの代わりに、上手くもなく下手でもない私の歌が重なる。
隣の部屋から漏れてくるロックが五月蝿(うるさ)い。


サビの後半でコーラとメロンソーダを手にした瀬川が戻ってきたので、私はもう一方のマイクを手渡した。
でも瀬川はこの曲を知らないらしく、首を横振ると隣で端末を操作し始める。