「あー、また勝手に撮ったでしょ」

 かわいい子は怒っていても可愛い。
 いや、違うか。彼女は多分本気で怒っている訳では無い。

 一応周りからの目を気にして建前上そう言ってること位私には分かる。
 だって、彼女は注目されることにまんざらでもない様子だし、何より高藤が自分を見てくれて嬉しそうに見える。

「じゃあ、こっち向いて」

 高藤に言われ、笑顔をカメラに向ける。
 この場合笑顔を向けているのは、カメラなのかそれとも高藤自身なのか。
 外野にはよくわからない。

 ごくごく平凡な私は、誰かの目に留まることも、熱心に写真を撮られることも無いからわからない。


 高藤とは所謂幼馴染というやつだ。
 小学校高学年で父親から譲ってもらったデジカメで写真にはまった高藤は今ではどこに行くにもカメラを持っている。
 基本的には風景だったり、花だったり虫だったり、そんなものばかり撮っていた筈なのに、高校2年になった今年、何故か高藤は日南さんの写真ばかり撮っている。

 そりゃあ、今までだって頼まれれば、文化祭の写真だって、体育祭の写真だって撮っていた。
 人間を撮らない訳じゃないことは知っているけれど、こんなに一人の人物に入れ込むのは初めてのことだった。