結果として、釣書の山も全滅だった。ひたすら機械的に写真だけを見た美斗は、疲労困憊して帰路につく。
刀隠家お抱え運転手の運転は快適だ。ただ静かに流れる窓の外の夜景を見ながら、美斗はまだ見ぬ『鞘』に想いを馳せる。

物心ついた時から、何かを渇望するような、ずっと誰かを探しているような想いを抱えていた。境御前には『鞘』と呼ばれる伴侶がいるのだとわかってから、自分が探しているのは『鞘』だと理解し、渇望する想いは益々強くなった。

でも一体、いつになれば『鞘』を見付ける事ができるのだろう。例えば、霊術士育成の専門機関があるという事で現在の大学に入ったが、半分は『鞘』が見付かる事を期待しての事だった。
尤も、自分を見て寄ってくる、あるいは遠巻きに憧れの眼差しを向けてくる女子生徒のいずれにも、美斗の心は動かされなかったが。

『鞘』を見付けさえすれば、この渇望は満たされるのだろうか。でも一体、何処をどんな風に探せばいい?

月も星も無い夜空を、美斗は見上げる。何処までも果ての無い、この夜空のように暗い迷路を、あてどなく彷徨い続けている気分だった。