先導するリムジンを見ながら、瑤太は運転席の母に言った。

「母ちゃん。もう大丈夫だからな」
「うん」
「もう祖母ちゃんや伯母さんの事とか考えなくていいからな」
「うん」
「祖母ちゃんや伯母さんの機嫌を気にしたりとか、機嫌を取ったりだとか、もうしなくていいからな」
「…うん」
「あの2人が『いる』って事、もう気にしなくていいんだからな」
「うん」
「これからは自由だから、皆で自由にやろうぜ。祖母ちゃんや伯母さんの目を気にしなくていいんだから、好きな所とかにもいっぱい行こうな」
「うんっ」

頷いた拍子に流れた涙を、瑤太は母に断りを入れてティッシュで拭った。優しく「今までずっと頑張ってきたよな。お母さん」と言って。

このようにして、親子は2つに分かれて、それぞれの新生活を始める事となった。
これは、ある一家の話である。