刀とは、本来だったら『斬る』物である。しかし『斬る』のではなく『区切る』役目を持つ刀が存在する。
弥籟刀(やらいとう)。遥か神話の時代においては『遣らいの刀』とされた、この世と幽世を『区切る』為に在り続ける刀である。
しかし、この弥籟刀。単独では機能しない。弥籟刀に宿る妖。いわば付喪神にとっての伴侶。『鞘』と呼ばれる人間がいてこそ、『区切る』力が万全のものとなる。
人間との間に子孫を成す事で、本体である刀の宿主『境御前(さかいのごぜん)』の代替わりをしていくという在り方をする妖だ。なので、境御前が不在の時代もあれば、境御前はいても『鞘』が不在の時代もある。
常に常に状況が変わりゆく歴史の中、幽世からこの世に這い出してくる妖魔を再び幽世へ送り返す、あるいは滅する能力を持った戦闘集団が登場した。それが『霊術士』である。
境御前を輩出する妖の一族『刀隠(とがくし)』を筆頭に、この世を守る霊術士達。
これは、日本各地に存在する霊術士の一族の、とある一家の話である。