「そんでまあ、何を実験したいんですかって訊いたら、――天科の言い分だし仮説らしいから完全に理解出来るハナシでもないんだけど――『一才発掘』、『一能開花』。早い時期に固有の才能を芽生えさせて、人生に役立てるとか指針にするとかそんなこと言ってた」
淡々と話す蒼に、雅が疑問を投げて来た。
「でも、そんなのわざわざすることなの?」
「うん?」
「だってそんなの当たり前にやってることじゃない? ってか、それが『学校』じゃないの?」
もっともだと蒼も思う。だからこそ天科が本当は何がしたいのかわからないでいた。それが真意なのか。
「……学ぶことにだけ重きを置いて、そのあまり個人の能力にフタをしている。所謂『優等生』の量産。俺が日本式の学校に合わなくて、そのために教師に煙たがれられていたように?」
いつの間にか雪が目を醒ましていた。蒼は大きく瞬いた。あ。
「それだわ」
「え?」
雅が間の抜けた声で返した。
「あー、なるほどだな。さすが雪」
「って、天科サンに聞いた」