「調ちゃん、何言いかけてたの?」
衛に離してもらった調は、紫に「うん」と肯いた。
「蒼と衛は天科理事のこと、どこまで踏み込んでんの?」
――調の洞察力は健在か。蒼は更に不機嫌な顔になる。
調は物事の本質に近づく洞察力が優れている。それゆえ、初等部時代の事件になってしまったのだが。今も、蒼と衛は天科の方へ近づいていることを察している。
……しかし、それ以上には発展しないのが調だった。直感は優れていても、自分で論理立てて考えるのは苦手なのだ。
「………」
見ると、Pクラス生が全員廊下に出揃っていた。尊についてきた白に、興味深そうな顔でこちらを見る和。リンも真剣な顔だ。
うーん? これって全員に話すべき、なのか? 衛がちらりと見て来たので、蒼は緩慢に肯いた。衛が級友たちの瞳に答えた。
「……天科は、俺たちを使って実験をするつもりらしい」
「実験?」
和が目つきを鋭くした。蒼が継ぐ。
「そ。俺らは、『実験初代』になるらしい」