「お前が喧嘩買うと被害は帝以上なんだよ。適当にやり過ごせ」

「えー、でも他の子どもからカツアゲとかしたらやじゃん?」

「そういうときこそ小野さんに電話する。むしろお前が警察の御厄介になりそうで冷や冷やしてんだけど。今度問題あったら父さんたちが赴任から帰るまで門限六時にするぞ?」

「……それ何年先の話だしー」

むー、と子供っぽく唇を尖らせる衛。

二人の両親は仕事でドイツに滞在している。

あちらで管理職についている夫妻なのでそう簡単には帰国出来ない。

それに夫妻が担当となって進めている事案なので、いつ日本での仕事に戻れるかもわからない。

その間、在が衛の保護者でもあった。

「取りあえず、問題起こすなよ。卒業式の日に」

「はーい」

「お前が問題起こしたら、Pクラスがまた問題児クラスになるんだぞ?」

「………」

それもありだな。

衛の心の中で、ブラック衛がいらん知恵をつけてしまった。

Pクラス。問題児を集めておくためのクラス。

――昨日、天科に言われた。

『十三人はPクラスの実験初代になってもらう』。

人身御供(ひとみごくう)かよと思った。

直後に天科の腹殴って意識奪ったのは、蒼の提案であった「話す場所を変える」、を天科が断ったからでもあるが、その一言に衛がむかついたからが九割だった。

今までのPクラスは何だったんだよ。俺らが実験初代? じゃあ、今までのPクラスは? 無意味だったのか?

Pクラスは今年度の卒業生をもって、衛たちの入学までの少しの間、姿を消す。ほんの少しだけ。