「………んえ? おれ? あー、はい。調くんに衛くんに蒼くんに紫ちゃんに翠ちゃんに帝くんに尊ちゃんに流くんに雅ちゃんに白ちゃんに和ちゃん臨さん。おぼえてますよ~」
全員の名前を呼んでからまた、くてっと寝てしまった。
……それ、『憶えて』るんじゃなくて『覚えて』るんじゃないのか? まさか全員と面識あるとは思えない。
それを示すように、雪に名前を呼ばれた何人か――蒼の面識のない生徒たち――は、「え?」という顔で雪の方を見ている。
雪がサヴァンどうのは……言うべきではないだろう。
必要があれば雪が話すだろうし、そういうことを知る機会は自然と訪れるだろうから。
「名前を呼ばれましたが、わたくしは誰とも知り合いではないので、ご挨拶させていただきますね」
日本人形のような少女が立ち上がった。紫よりも綺麗な、音のない所作だ。
「茶山和といいます。今までが女子校で共学の勝手をあまりわかっていないので、どうぞご教授くださいまし。わたくしも名前で呼んでいただきたく思います」
……おお、自分のこと『わたくし』って言う奴初めて見た。本物の貴族みたいだな。和はまた、音もなく椅子に座った。
「では、最後は僕ですよね。咲逆臨といいます。読みは『のぞみ』だけど、友達からは『リン』って呼ばれてたんで、そう呼んでもらえると嬉しいです」
最後の一人――リンが挨拶をしたところで、チャイムが鳴った。
今日は入学式と、このホームルームで解散。その後は部活見学も出来る放課後となる。
チャイムの音で華村の意識は回復したようだった。
「じゃあ今日は終わりなんね。みんなお疲れさまよ。――あ、あと解散する前にみんなに訊きたいんだけど――」
と、華村が言った。
「Pクラスの『P』って何なん? ほかの先生が教えてくれなくて」