蒼だけでなく、衛や翠も同じことを思っているだろうとわかる。
調が蒼たちの反応に怯えているのはわかっていたから、あえて声をかけないでいた。
調から何らかのアクションを起こすのを待ってみるつもりで衛と謀っていたのだけど……そういう反応かよ。一言くらい言えよ。そしたらこっちだって――
「次、蒼でお願いします」
「………」
調、丸投げしやがった。蒼が軽く睨むと、その視線を受けた調はむしろ安心したような顔をして、蒼に向かって笑みを見せた。
……策士め。仕方なく立ち上がる。
「神林蒼。初等部からここです」
それだけ言って、椅子につく。
蒼の怠惰な態度を知っている旧知以外は、少し意外そうな顔で蒼を見てくる。
五月蠅い奴らばかりだから、蒼も同族と思われたのだろうか。
特に、祀木雅は驚いたような顔で見てくる。悪かったな。衛が立ち上がった。
「先ほどは失礼しました。榊原衛。空手部に決まってます。帝以外、仲良くしてください」
衛がはっきり言い切った。華村は片手をあげて何か言いたげな顔で動かない。
戸惑っているようだ。新任教師には荷が重いクラスだろうなあ、と蒼は他人ごとのように思う。
「あと――雪? 俺らのこと憶えてるか?」
もう勝手に生徒で話を進めているクラスになっている。まとめるヒト大変だなー。蒼はできたら傍観者でいたい。
「……んあ?」
担任教師・華村の目の前の席で、机に突っ伏していた森崎雪がゆっくりと顔をあげた。
調から、雪は前の席で寝てばかりいたと聞いていたけど、高等部でもそのスタンスでいくのかい。なんのために戻って来たんだ。