「はい。お騒がせしてすみません。私が草賀尊で、帝くんは双子の兄です。帝くんは、ただひたすらに衛くんのファンなだけなんです。衛くんにはいつも迷惑ばかりかけてるけど……何かやらかしたら私に知らせてください。ご飯抜きにしますんで」
ぺこりと頭を下げた。妹、強いな。
「それから、わたしの友達の猫柳白ちゃんは、手術で声帯を取ってるから喋れませんけど、耳は聞こえてますし、普通の子となんも変わんないです。その辺りよろしくお願いします」
白……お前、いい友達持ったな。つられたように、白が立ち上がる。そして白もお辞儀してから、いつもの手帳をポケットから取り出した。
【猫柳白です。ましろって呼んでください。蒼くんの親戚です】
「蒼の親戚?」
流がそこに反応した。何人かの瞳が蒼に向く。
「そう」
簡潔な蒼の答えに、華村が大きく瞬いた。
「もしかしてこのクラス、顔見知り多いんか?」
「多いですよ。わたしと蒼ちゃんと翠ちゃんは兄妹ですし、衛ちゃんはずっとここですし、調ちゃんと雪ちゃんは初等部ここですし」
落ち着いた声で説明したのは紫だった。
「神林は三兄妹なんね。内部進学も、そりゃそうだね。じゃあ神林――お姉さんから、続けてもらっていい?」
はい――凛とした声で応えて、紫は立ち上がった。
姿勢の良さと所作の精微さは、聖堂の先生たちが教えたものだ。
翠も同じ立居振舞なのだが、背丈がある分紫の方が見ていてはっきりわかるのだ。