「スマートだなあ、祀木」

「堅苦しいの苦手なんで、呼び捨て希望です」

「みやびでいいの? はいはーい! じゃあ雅の次俺! 草賀帝。衛に惚れてここに来ました!」

「死ねバカ!」

準備していたかのごとく間髪置かずにペンケースが飛んだ。衛、尊の一ペシ程度で完全に抑え込めるとは思っていなかったな。翠の十かかと落としにしておけばよかったかな。

「え、衛って榊原のことだよね? 草賀――兄さんの方はそっちの人なんか?」

教師にそんなことを確かめられるとは。しかも入学式に。衛は憤然と抗議しようとした――が。

「帝くんのバカ! 衛くんに迷惑かけないでって言ったでしょ!」

「……尊、兄さんをかばってくんないの……?」

ペンケースが側頭部に直撃して机に突っ伏す帝を怒ったのは、隣の席の尊だった。

衛は気を抜かれてしまって、立ち上がったままどうしていいかわからなくなっている。

「かばえないほどのことしてんの! 最近の帝くんは! いくら衛くんの強さに惚れてても、やっていいこと、言っていいこと悪いことあるでしょ。その辺りの分別つけるまで衛くん禁止にするよ!」

……衛くん禁止? どういう意味だ。半眼になる蒼をよそに、何故か拍手の音が聞こえた。白だった。感動し切り、みたいな羨望の眼差しで尊を見ている。お前も友達大すきか。同じクラスでよかったな。

「ええと……草賀、妹さん? よかったらお兄さんの分も一緒に紹介してもらえるかな……?」

華村が机に突っ伏す帝を横目に見ながら言った。帝に回復の兆しはない。ペンケースのクリーンヒットと、尊に言われた言葉がトドメになったようだ。