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「華村浬(はなむら かいり)。今年教師一年目なんで、皆さんお手柔らかに」

入学式が終わって、クラスでのホームルーム。Pクラスの担任はそう挨拶した。ショートカットに、ちょっとひょうきんな印象の丸い眼鏡の女性教師だった。

「せんせー、イントネーション混ざってねー?」

帝が座ったまま言葉を放った。

蒼も、あれ? と思った程度なのだが、色々な地方の発音が混じったように聞こえたのだ。帝はそれをはっきり聞き取ったのだろうか。

「あ、私小学校の頃から引っ越し多くてねー。聞き取りづらかったらごめんな?」

「へー。せんせーも大変なんだねー」

「大学入るまでなかなか友達出来なかったんよ。んだからさ、みんなはたくさん友達つくってな」

第一印象はなかなかよい教師だ。……どの地方を歩いてきたかはわからなかったが。

「えーと、自己紹介って入学式でやるんだっけ? 私転校の度にしてたから、勝手がよくわからんのだけど」

浬が、手元の資料を見ながら言う。

「だと思いますよ。今も適当に座っちゃってますけど……」

片寄ポニーテールの少女が言うと、華村は「じゃあ祀木からやってもらってもいい?」と振って来た。

祀木は、そういう振りが嫌だったり苦手だったりするようではなく、応じて立ち上がった。

「祀木雅です。出身は斗方(とかた)中。剣道やってたので、剣道部入るつもりです。同じ中学からここに来た子がいないので、どうぞよろしくです」