「兄貴―、蒼がコンビニまで来てるからちょっと話してくるー」
「蒼? いいけど……」
ダイニングテーブルでパソコンをいじっていた兄の在(あたる)が眼鏡を置いて、靴をはいている衛のところにやってきた。
「七時には帰れよ?」
「はーい」
今は六時か。衛はダイニングの時計をちらっと見遣る。
「つーか、蒼もメシまだなら連れてきたら? そんでうちで話してた方が保護者として立場あるんだけど」
夜歩きされるよりは。と、兄は付け足した。
二人とも今日の夕飯はまだだ。蒼がやって来て一緒にご飯を食べることはよくあった。その度に妹たちに「ずるい!」と責められる衛だったが。
いや、お前たち今は聖堂にいないじゃんと思う。
「向こうで済ませてきたっぽい」
「そうか? ならいいけど……衛」
「はい」
低く名前を呼ばれて、衛は二つ上の兄に向き直った。背丈は兄の方が遙かに上。
「たむろしてる学生がいたら?」
「注意して帰す」
「深夜徘徊っぽいご老人がいたら?」
「認知症の可能性も考えて、とっつかまえておいて小野さんに電話する」
小野さんとは近所の交番のお巡りさんだ。ちなみに相棒は中村さんという。
「喧嘩売られたら?」
「買う」
「バカ」
ぺしっと軽く頭を叩かれた。兄、怖い顔。けど元が柔和顔つきなので迫力はない。