呼び方への首肯だろう、白は大きく肯いてから、手に持っていた手帳に胸ポケットから取り出したボールペンで書き込んだ。

【恋さんが、ここなら知り合いが多くて安心だよって。色んな分野の勉強も出来るって聞いて】

「へー。恋さん心配性だな」

「女性に優しい男を目指すそうだ」

【恋さんやさしいよ!】

蒼の言葉は笑顔で肯定された。……恋と白がどんな風に生活していたのか、少し心配になってくる蒼だ。

「そういや、恋さんが男装してる理由って、白知ってる?」

衛に問われて、白は少し躊躇ってから肯いた。

【婚約してた人と、別れることになってからって聞いたよ】

「婚約!? 恋さんにそんな人いたの!? 蒼知ってた!?」

え……この前聞いた男って、婚約者?

「知らねーよ。恋に興味ねえし。男装にハマり過ぎて振られたんじゃね?」

蒼がどうでもいいとばかりに適当を言うと、白の足が止まった。……ん?

「白?」

蒼が立ち止ると、白は慌てて目を逸らした。誤魔化し方が下手だ。

「まさか本当に女の人がすきになって別れたの?」

衛がそう訊くと、白はぶんぶん首を横に振って否定した。

【恋さんは知られたくないと思うんだけど、剣さんが教えてくれたの。ふられたのは恋さんの方みたいなの】