「おう? 誰?」
「……恋のところにいた奴」
「剣さん?」
「……便宜上は、恋の姪」
要領を得ない蒼の答えに、衛は三度瞬いた。
【はじめまして。猫柳白です】
「……はじめまして。榊原衛です」
群衆の中から蒼が引っこ抜いて来たのは、色白で猫目の小柄な女子だった。何故か手帳で挨拶。蒼が二人の間に立つ。
「白は声帯を手術で取ってるから喋れないんだけど、それ以外は一般と変わんないから。恋と一緒に暮らしてるから、一応俺の親戚ってことになる」
蒼の説明に、衛は胡乱に目を細めた。
「……紫と翠は知ってんの?」
「隠そうとしたんだけど、俺が恋のとこ行ったその日に突撃してきて全部知られた」
白のことを見た直後、二人揃ってムンクの叫びみたいになっていた。蒼の説明一つで納得したけど。
「だろうなあ」
衛も納得する妹たちの反応だった。
「なんか今見たら白もPクラスだったから、衛には言って置く」
「……本当どういう基準で集めたのかね、あの理事さんは」
天科に対して文句が尽きない二人だった。
ふと、衛がやけに爽やかな笑顔を向けて来た。
「蒼の彼女って扱いでいいの?」