「小芝居しなくていーから。ガチっぽくて怖い」
「えー、だって本気だし?」
「……今のうちに訊いておくけどさ、恋って本当に百合な人なの? 恋愛対象は女性?」
恋ののらりくらり具合に嫌気が差した蒼が問うと、恋から刹那、表情が消えた。何故か白も、傷付いたような眼差しをした。ほんの、少しだけ。聡い蒼は気づいたが、あえて触れなかった。
「……いや? 恋愛対象として女性をすきなわけではないかな。前に付き合ってたヤツがサイテーな男でね。そういうの見ちゃったら、あたしは女性を大事にしたくなっただけだ」
「……男いたんだ」
知らなかった。
「一人だけだけどね。あ、もうとっくに別れてるから。ストーカーとかそういうのではなから安心して。二人の生活に被害があるようなヤツではないし」
「……それならいーけど。えーと、ましろ?」
呼ばれて、白がはっと覚醒した。……今まで固まっていたのか。
「いきなりヤローが飛び込んで来て不便かけると思うけど、よろしく」
白は慌てて頭を下げた。……うーん?
「ましろ。頭あげて」
促されて、白は顔をあげた。
「なんかそういう、下手? に出るような真似しなくていいよ。俺と恋が血縁って言ったって、先に恋のとこにいたのは白なんだし。俺が入り込んだようなもんだしな」
蒼が言うと、白は大きく瞬いた。
「それから、俺の妹――特に同い年の二人なんだけど―――
ぴんぽんぴんぽーん
「蒼ちゃんいますかー?」
「恋さんこんちはー」
……説明する前に乗り込んできやがった………。