「物わかりがいいな、蒼は」

恋は、うんうんと満足げに腕を組んだ。動作がいちいち男らしい。

「けど、学校では『神林』を名乗らせてもらいたい」

「なんで?」

「……恋のところに女子がいて一緒に暮らしてますなんて言ったらあいつらが不安定になんだろ。ましろが『猫柳』名乗ってるから、せめてもの抵抗」

「……お前もほんと妹アホだよねえ。けど、そのくらいならいいかな。白は?」

【恋さんのいいように、した方がいいと思う】

「うん。ありがと」

恋は、ほころぶような笑顔で白の頭に手を載せる。白の嬉しそうな顔は、撫でられている猫みたいだった。

「取りあえず、蒼と白の部屋は別にあるから安心しなさい。蒼がヘンなことするとも思っちゃいないし」

「そりゃどーも。つーかヘンなことしそうなのは恋なんだけど」

「あたしはほら、女性同士だし?」

がばりと白に抱き付いた恋に、白は驚き過ぎて固まってしまった。白の顔は真っ赤。色白だから余計に目立つ。

「世間じゃそれ、百合っつーんだろ。恋がやると半ば犯罪じみてるし」

「大丈夫、白はあたしが幸せにするよ」

今度は白の両手を握ってそんなことを真顔で言った。キラキラと星の舞うような真顔だった。

白、今度は口を引き結んで固まった。顔は沸騰寸前みたいになっている。そのうち爆発すんじゃないかな。