けたたましい目覚ましの音に、雪はのろのろと瞼を開けた。
この音が響いて十三分五十七秒……そろそろ起こしにく
ヴニャーッ!
頭に直に重みが加わった。
ドスの効いた渋い声の飼い猫が、机に突っ伏して眠りこける雪を起こしにやって来たのだ。
あるいは目覚ましの音が限界だったか。
早く止めろと言わんばかりに頭の上から、爪を出さない猫パンチで頬を叩いてくる。やさしい。
「………………ぅぃー……」
うつぶせのまま両手で猫を持ち上げて、後頭部からおろした。そのままだるそうな動きで頭を持ち上げる。
「おはようございます……ハカセ」
ヴナー
やっと雪がお目にかかったハカセ――真っ黒い長毛種の小柄な猫、はっきり言って黒い毛玉――は、ぴしりと尻尾で机を打った。
このハカセ、拾ってから二年なのだが、生後半年くらいで成長が止まってしまったように、子猫みたいな大きさだった。
渋いのは声だけだ。名前の由来は、ハカセがそう答えたから。
雪がいるのは、研究所の研究生の宿舎だった。日本での学生寮と同じだ。
ヴナー
「何度も言いますが……ハカセ……俺はにじゅうじかんくらいねないといきていかれな
ぐー。雪、再び寝落ちした。ハカセの爪が光を得た。