「……なんか言うの恥ずかしいじゃない」
「ええー、聞きたいよー。いつから? どんな人?」
尊は帝から背を離して、ソファのひじ掛けに手をつき身を乗り出しながら姉に問う。
弥は口にしてしまって戻れないと感じたのか、観念したように話し始めた。
「……ちょうど半年前。学校が別になって、再会して、意気投合したからかな? どんな人って言ったら……すっごく優しい。アホかってくらい優しい。けど腹黒さも持ち合わせてる」
「マイナス評価が勝ってるよ、おねーちゃん……」
優しいに一票、アホと腹黒さに二票入る。俄然姉の彼氏がどんな人か気になりだしたけど、弥ははたはたを右手を振った。
「あたしの話はもういいでしょ。そこのバカ弟は全っ然興味なさそうだし」
尊の背中から離れても変わらない体制のままゲームにいそしむ帝は本気でどうでもよさそうだ。
「姉ちゃんの彼氏ってなんかの教科書かと思ってたー」
「も少しわたしに興味持ちなさいよ」
帝はゲーム機の画面から、目線すら動かさない。
「シスコンとかキモくね?」
「……あんたが言う?」
口には出さなかったが尊も同じことを思った。帝が喧嘩しまくっていた発端は、妹をバカにされたことから始まるのに。
「まあいいわ。楽しく過ごしなよね? 二人とも、中学では結構腫れもの扱いだったんだから」
尊は苦く笑う。確かに。
まだ全員は知らないけど、今日逢ったみんな、いい人だった。