帝が、尊に負い目を感じているのはわかっていた。一緒に生まれた兄妹だもの。

帝と尊は、家にいるときはよく背中合わせでソファに座っている。

尊は本を読んでいて、帝はゲームをしている。

意味があるわけではないのだけど、そうしているのが当たり前だった。

その様子を見た姉は決まって、「さすが双子」と、少し羨ましそうな顔をする。

いいでしょ、と尊は誇らしくなる。こうしているのが、普通だった。

だから、わかっていた。一卵性であることが、帝にとっての尊への負い目だと。嘲笑の的になる尊の低身長。帝が平均より背が高いから、余計に目立つのだ。

「あれ? 姉ちゃん帰ってたんだ」

「ただいまー。あんた髪拭いてから出て来なさいよ」

「自然かんそー派―」

スウェットを下だけはいて、バスタオルをむき出しの肩に引っ掛けた帝がリビングに入って来た。

「帝くん、風邪ひくよ」

「んー」

尊が注意しても生返事だった。……未だに感動が抜けきっていないね。衛が一言答えてくれたことの感動。

「せめて上着る。ドライヤー持ってくるからねー」

洗面室に向かった尊に、背中から声がかかった。

「尊、甘やかすのは駄目よ?」

「そーだぞ尊。俺がろくな人間になんねえ」

「自覚あるならロクな人間なりなさいよ」

弥がぺしりと軽く頭を叩いた。姉は帝には手厳しい。暴れん坊だった頃の記憶はなかなか塗り替えられないようだ。