Pクラスの現統括者は、理事の一人であり、城葉都市にも深く食い込む、学問研究、学徒の養育・援助に強みのある財政グループ、天科グループの若き総帥、天科全(あましな ぜん)。
蒼と衛は、入学式の準備で早上がりとなっていた昨日、天科全に逢いに行っていた。
その折、『Pクラス』の本当の意味は聞いていた。
それには二人とも、大して感慨も感想もなかった。
しかし、天科がPクラスで企んでいることについて、二人が考え込んでいるのは事実だった。
卒業式、押し付けられ生徒会長最後の仕事、答辞をしているときの蒼はさすがに冷静だったが、まだ天科に対する考えがまとまっていないのが衛にはわかった。
伊達にあの仏頂面の友人やっていない。
衛も蒼も、中学も桜学だから、高等部への進学は決められたことのように選んだ進路だった。
ふと、携帯電話の着信音が響いた。
考え事をするとき逆立ちの格好がいい衛は、今も自分の部屋で壁倒立していた。
蒼には、「お前よくわかんねえ思考回路だなあ」と言われたことがある。
足を下ろして、ベッドに投げ出された電話を取る。あれ? 見たことのない番号……もしかして。
「もしもしー?」
『衛、今いいか?』
「あ、やっぱ蒼か。何? 番号、ケータイじゃん」
蒼は、携帯電話は持っていなかったはずだ。衛はベッドを椅子代わりにする。
『あー、みんなから渡された。一応俺、中等部出たら恋(れん)のとこ行くってなってるから、これで毎日聖堂に電話しろって』
「なるほどねー。いいの? ブラコン妹たちに先に電話しないで」
『……紫と翠に渡された』
渡す現場にいたのか。と言うことは、その場で紫と翠は電話済なんだろう。
『つーかブラコンって言うな。体裁悪いから』