「帝は?」

「お風呂だよー。さっきまで衛くんたちとお話してたの」

「え……衛くんと? だ、大丈夫!? 今度こそストーカー被害で訴えられんじゃないの!?」

「…………おねーちゃん」

がばりと尊の肩を摑んだ姉は顔面蒼白だった。そんなことないよー。尊が言ってもまた信じてもらえなかった。

「……やっぱり私、弁護士に進路変えようかなー」

ダイニングテーブルに尊がお皿を並べていると、弥がつまみ食いしてきた。

弥の帰りが遅い日は、大体帝と二人で食事は済ませている。父や母は大学への泊まり込みが多い。夕飯は帝と二人で作った。

「弁護士? 心理学じゃなくて?」

「そ。だって帝が問題起こしたとき、法律に詳しいのがいた方が何かと安心でしょ?」

「うーん、身内に法律家がいるのは心強いけどねえ」

食事を始めた姉の向かいに立って、尊はティーポットからカフェインレスの紅茶を注ぐ。三つ分。弥は猫舌だから食事が終わって冷めたくらいがちょうどいい。帝もそろそろあがってくるはずだ。

「でしょ?」

「でも――もう、そういう心配しなくていいと思うよ?」

尊はカップを一つ、弥の方へ置く。弥は胡乱な顔で尊を見てきた。