帝くんは、いつだってわたしの味方だった。

「ただいまー、尊。帝、今日は暴れなかった?」

玄関に迎えに出る尊に、弥(あまね)は学校から帰ると必ずそう訊いて来た。

弥は双子より四つ上の十八歳。現在、大学一年生。

三人きょうだいの長女で、尊以上のとてもしっかり者。

きょうだいの父は大学の先生で、違う大学だが弥自身も心理学の研究者の道を望んでいる。

母は父とは大学の同期で今は研究助手をしていて、二人とも今日もまだ帰っていない。

「大丈夫だよー。卒業式だったし」

尊は姉の鞄を一個受け取る。お弁当の袋だった。このまま洗ってしまおう。

「卒業式だったから心配だったのよ。まーた喧嘩収めと言わんばかりにあいつ、喧嘩買っちゃうんじゃないかって」

「んー、先生胴上げする組に混ざってたよ?」

「! 胴上げしておいて受け止めずに地面に落とすのね!? 悪質な!」

「……おねーちゃん、弟をもっと信用してあげて」

そんな意地悪してないよー、と言っても、弥は眉根を寄せるだけだった。

帝の過去の素行が姉の信用をなくしていた。

「お父さん、今日は泊まり込むって。お母さんは一度帰ってくるって」